研究課題
リチウムジルコネート等の一部のセラミックは、大気中水蒸気を吸収し、加熱することで水素ガスを製造する能力を持つ。本研究ではイオンビームを用いた分析手法、X線回折、加熱ガス分析等により、この反応メカニズムについて検証した。イオンビーム分析では、飛行時間とエネルギーを測定するTOF-ERDAを利用した。これまで、TOF-ERDAにより、水素が内部まで保持されていること、試料表面にリチウムが凝集していることが測定された。これに加え、試料内部のTOF-ERDA測定を実施したところ、内部でも水素は検出されたが、リチウム凝集は見られなかった。したがって、リチウム凝集は表面でのみ起こっていると確認された。これは、セラミック表面に大気中の水蒸気が付着し、リチウム・水素置換により水酸化リチウムが形成され、それが二酸化炭素と反応し炭酸リチウムが生成したシナリオを支持している。セラミック製造後、および大気保管により水蒸気吸着後の試料をX線回折した結果、吸着後は結晶構造が崩れていることが分かった。また、吸着後の試料では炭酸リチウムのピーク構造が確認され、上記吸収シナリオと矛盾しない結果となった。水蒸気を吸収させたセラミックを加熱ガス分析することにより、放出されるガスについて分析した。真空中で室温から600℃以上まで加熱しながら、Q-Massで測定した。300~400℃以上の領域においては、顕著に水素ガス量が増加している結果となり、水素ガスが生成されることが示唆された。これらの結果により、特に水吸収に関しては一つのシナリオを提起することができた。さらに水素ガス放出過程の温度依存性についても確認することができた。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
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