研究課題/領域番号 |
18K04951
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
清水 洋孝 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (10448251)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱間等方圧加圧 / 冷間圧延 / 極低温 / 温度計 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究目的は、バイメタル合金の製作と光ファイバーとの組み合わせによる、温度計への合成であった。当初使用を予定していた市販品のバイメタルの入手が生産終了による影響から不可能になった事で、バイメタルを作製する必要に迫られた。バイメタルの標準的な製作手段である、冷間圧延の方法を利用して、試験的に作る場合、大量生産の工場のラインを一旦止めて、試したい金属の組み合わせと厚みに設定しないし、圧延を行う必要が生じ、非常に高額な製作費用が発生する事が分かったため、この方法での自作を進める事は諦めざるを得なかった。この方法に対して、Hot Isostatic Pressing(HIP)と呼ばれる熱間等方圧加圧の手法を応用して、バイメタルの試験的な作製に協力してくれる会社が見つかり、無酸素銅とインバーを使ったバイメタルの作製を進める事に成功した。HIPでの微小な試験片の作製は、その製作工程上非常に難しいため、ある程度の厚みと大きさを持った試験片を作製して、その後、極低温域での振る舞いを観察しながら、無酸素銅側とインバー側の厚みを調整しながら薄く削って行く手法を取る必要が生じた。しかしバイメタル合金は、加工時の熱を感じて、大きく反ってしまう性質を持つため、厚みを揃える切削加工が容易ではない事で、加工に時間を要する事となった。現在機構内の施設に協力を依頼しながら、バイメタルの厚み調整と切削加工について準備を進め、試験的な治具を用意する事で、形状を保ったまま厚みを制御する方法の検討を進めている。他方、光ファイバーのグレーティング部分の反射率を変化させ、観測されるクラッドモードの光強度を測定する事で、反射率とクラッドモードの強度相関を得る事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、冷間圧延の方法によって、様々な線膨張係数の異なる異種金属を接合して、バイメタルとして利用する予定であったが、素朴な圧延の方法での製作には高額の費用が掛かる事が分かり、別の製作方法を検討した。この結果、HIPと呼ばれる熱間等方圧加圧の方法で、異種金属を接合する事が出来る事が分かり、この手法を使ったバイメタルの試作に移る事が出来た。しかしHIPの手法を用いた場合、試験片の大きさが大きくなってしまい、治具としてのバイメタルの熱容量が大きくなる問題が発生した。また、高膨張率側の金属厚みと、低膨張率側の金属厚みの制御が難しく、バイメタルが出来上がった後に、低温での振る舞いを見ながら、配合の調整を別途機械加工を通して行う必要が発生した。しかしこの機械加工によって生じる熱が、バイメタルの形状を変化させて、厚みの制御が困難になる問題にも直面したため、治具としてのバイメタルの作製が非常に長い時間を要した。この結果、温度計として組み上げた状態で低温試験を繰り返す事が難しいと判断して、研究課題の1年の延長を申し入れた。装置全体の振る舞いの試験は延長した最後の年に回す事にして、治具としてのバイメタルの完成に必要な加工技術やその他の工夫の開発を集中して行う事とした。
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今後の研究の推進方策 |
光ファイバーのグレーティング部分に与える反射率の値を変化させる事で、発生するクラッドモードの光強度が変化する事が確かめられた為、出来るだけ高い反射率のグレーティング加工を施す事が実験を有利に進めるために必要である事が分かった。この結果を踏まえて、反射率を出来るだけ高める様に依頼した光ファイバーを製作した。一方で、このクラッドモードを吸収して塑性変形させるバイメタル治具の製作は、加工時の熱変形の問題等が発生して、時間要した為に、1年間の延長を申請した。必要な備品であった計測器の導入を行う事で、実験結果の記録が残せる様に環境を整備した。現在までに、温度計を構成する主要な部品の手配を何とか終える事が出来たので、延長申請を行った1年間を使って、極低温での試験を行う計画を進めている。実際の試験環境を得るためには、液体ヘリウムを使った極低温環境を用意する必要がある。この液体ヘリウムを利用する案に変わる方法として、小型冷凍機を用いる方法が挙げられる。現在利用されていない小型冷凍機を借りる事で、大型冷凍機による液化運転を経ずに、極低温環境が用意出来る点が、実験に必要な時間の短縮の視点からは、非常に効率的に思われる。今後はこの小型冷凍機を使った温度計の性能試験を行える様に、装置の改造を含めて、環境をの整備を進めながら、温度計の開発実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度まで活動で、最終的な目標である、温度計の構成に必要と考えていた主要な構成部品に関しては揃える事が出来た。冷却試験を行う採取年度で必要と考えている予算は、主に論文の校正費用等である。昨年度予定していた学会発表が、コロナの影響で現地開催が行われなくなった為に、出張旅費として計上していた費用が必要なくなり、その分の費用が、バイメタルの製作費として必要となった。最終年度の冷却試験に必要と思われる、熱伝導を補助するグリスやインジウムシート等の消耗品の購入と、論文の校正費用及び投稿料に残った予算を使用する予定で進める。
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