本研究ではX線領域の光について、コンプトン散乱を用いて光渦度の測定を目指した。 軌道角運動量、光渦をもつ光はレーザー物理においては既に発生方法が確立され、研究は幅広く展開されている。これに対しX線領域の光では、10年ほど前にシンクロトロン放射に光渦が含まれていることが理論的に示されて以来、実証研究が始まったばかりである。現在、光渦は光の強度の分布として測定する方法が主流である。 光が軌道角運動量をもてば、コンプトン散乱ではインパルス近似によって「運動量」として観測され、光渦の角運動量がコンプトンプロファイルの形状変化として観測されると期待される。本研究は、X線領域の放射光について光渦をコンプトンプロファイルの変化として検出する方法を提案であった。 本研究期間中においては、大型放射光施設SPring-8の挿入光源から放射されるX線の軌道角運動量(円筒座標系で考えたときのラゲールガウシアン光の渦度、およびそれと一次結合で共役な関係にあるエネミートガウシアン光のノード数)について、コンプトン散乱における運動量の保存を見出すことを第一段階とし、円偏光成分の軌道角運動量の量子数が示す光渦度の検出を実証を目指した。2019年度は検出器用架台を製作し、大型放射光施設SPring-8のBL37XUにおいてアンジュレータからの直線偏光を持つ放射のアンジュレータ次数を変えて入射光として、電子数が多い試料及び少ない試料について測定を行った。アンジュレータ次数はエルミートガウシアン光のノード数に対応する値である。2020年度は実験結果をまとめ論文を投稿した(投稿中)。
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