研究課題/領域番号 |
18K04958
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
宇野 和行 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (90294305)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | α型酸化ガリウム / ミストCVD法 / 結晶成長メカニズム / 配位子交換 |
研究実績の概要 |
α型酸化ガリウム系材料のヘテロ構造作製のために,表面平坦性の向上を目指して研究を行った。そのためには単なる結晶成長条件の最適化を行うのではなく,結晶成長メカニズムを考えなければならないことに気がついた。成長メカニズムの支配因子は単純なものではなく,Ga原子の水溶液中での錯化状態を検討しなければならなかった。 実験的な検討を行った結果,次の事項が見いだせた。(1)Gaイオンは水和している状態では成長に寄与しない。(2)Gaイオンをアセチルアセトナート錯体化すると,結晶成長レートと錯化濃度の理論カーブとが一致した。つまり,アセチルアセトナート錯体化したGaイオンが結晶成長に寄与することが分かった。(3)酸素同位体水による成長の結果,α型酸化ガリウム中の酸素の起源は水中の酸素原子であることが分かった。アセチルアセトナートの酸素原子やキャリアガスの酸素であることは否定された。(4)以上から考えられる結晶成長メカニズムとして,錯体化したGaイオンが水素結合で基板表面の水酸基と結合し,配位子交換メカニズムで酸化物として結晶成長するというモデルが考えられる。(5)サファイア基板を確実に原子レベルで平坦化する前処理方法を確立したことと,コンピュータ制御による成長ごとのばらつきの抑制,成長温度の管理を工夫することにより,成長温度500℃では,X線回折測定結果からε相がα相比で1/1000程度混入することが分かった。わずかに500℃より低い温度が最適であることが想定される。(6)アルミニウムのアセチルアセトナート化には時間がかかることが分かり,撹拌による錯体化のばらつきがAlGaO混晶のAl組成に影響を与えることが分かった。 以上の(1)~(5)の結果は2020年3月の応用物理学会で発表し論文投稿中である。(6)の結果は2020年9月の応用物理学会で発表し,論文投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヘテロ接合の形成のためのメカニズム探索等に時間をとられている。研究計画として掲げたものからは遅れていると言うしかない。しかし,ミストCVD法の酸化物薄膜形成のメカニズムについて新たな知見が得られており,学術的な研究成果としては十分なものが得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度における結晶成長メカニズムについての研究を受け,結晶成長場における前駆体の振る舞いが明らかとなった。その結果,安定にAlGaO混晶の成長が可能となっており,ヘテロ接合の形成など当初の研究目的の達成に向けての実験を推進していく。
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