研究課題/領域番号 |
18K04959
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
市野 邦男 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90263483)
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研究分担者 |
赤岩 和明 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (90778010)
阿部 友紀 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (20294340)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電気伝導性制御 / ワイドバンドギャップ / バンド端エネルギー / 硫化物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究では,ワイドバンドギャップ硫化物半導体においてバンド端エネルギーと電気伝導性との関係を明らかにすることを通して,電気伝導においてp型が得られにくい単極性との関連を検討し,各種応用の基礎となる知見を蓄積することを目的としている.平成30年度の実績概要を以下に示す. (1)高品質ZnMgSTe 4元混晶の作製条件の検討 ZnMgSTe 4元混晶の作製についてはほとんど前例がなかったが,Mg・Te組成の小さい範囲では,研究代表者らの事前研究においてGaP基板上への分子線エピタキシー法によりZnSTeの作製条件をベースに高品質結晶が得られるようになっていた.本研究では,より広い範囲での組成制御のため,Mg・Te組成の大きい範囲でより格子整合性の良好なGaAs基板への無添加ZnMgSTe 4元混晶の作製を行い,その組成制御性の向上と高品質化のための検討を行った.その結果,Mg組成60%,Te組成40%程度までの範囲で組成制御が可能となった.しかしながら,各組成の増加とともに結晶中の組成揺らぎも増加する傾向にあり,全体的な結晶性としてはまだ十分とは言えず引き続き改善の検討が必要である. (2)p型ZnSTe:N・ZnMgSTe:Nにおける最大正孔濃度・各バンド端エネルギーの組成依存性の評価 (1)の結果を受け,広い組成範囲のZnMgSTe 4元混晶に対して窒素アクセプタの添加を行い,各組成における電気伝導性を評価した.その結果,4元混晶ZnMgSTe:Nにおいても3元混晶ZnSTe:Nと類似のp型特性を得ることができ,また,その抵抗率はやはりZnSTe:Nと同様に主としてTe組成に依存する結果が得られた.これらの結果はさらに精査が必要ではあるが,主にTe組成に依存する価電子帯端エネルギーに依存して電気伝導性が決定されるという研究代表者らの仮説を支持するものであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mg・Te組成の比較的大きいZnMgSTe 4元混晶を作製し,結晶性については十分な高品質までは達していないものの,組成制御などの作製条件の検討を進めることができた.また窒素アクセプタを添加したZnMgSTe:Nも作製し,Te組成に依存するp型伝導の傾向が見られたことから,本研究の目的に向けてよい見通しが得られている.これらの点から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実績概要で述べた(1),(2)の項目を引き続き進展させるとともに,以下の項目に取り組む. (3)p型ZnMgSTe:Nにおける正孔濃度およびバンドギャップの最適化 (2)の結果を基礎に,(4)と並行して実験的にZnMgSTeへの窒素アクセプタ添加の最適条件を目指す.すなわち実用的p型特性とワイドバンドギャップを両立する条件を追求する. (4)電気伝導性決定モデルの検討 (1),(2)で得られた実験データを基に,各バンド端エネルギーと最大正孔濃度との関係について理論的モデルを構築する.まず,これまでに提案されているp型化阻害の補償モデルを検証し,それらを参考に実験結果に適合する電気伝導性決定モデルを検討する.さらに所望のバンドギャップに対し最適なMg・Te組成を予測し,p型結晶作製の手がかりとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度において結晶成長装置の改良が必要となり,消耗品費を予定以上に消費したため前倒し支払い請求を行った.その際の年度内使用額推定の誤差により残額(次年度使用額)が発生した.しかし,元々次年度以降に使用予定だったものであり,研究計画に基づいて令和元年度中に有効に使用する予定である.
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