研究課題/領域番号 |
18K04960
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鈴木 良尚 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60325248)
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研究分担者 |
佐藤 正英 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (20306533)
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生理食塩水 / ニワトリ卵白リゾチーム / 斜方晶系結晶 / 正方晶系結晶 |
研究実績の概要 |
鈴木らは、ニワトリ卵白リゾチームの斜方晶系結晶の沈殿剤フリー結晶化および結晶構造解析の結果をまとめ、論文化し、出版した。さらに、関連データ、理論等に関する論文を出版している。 実験的には、生理食塩水(9 mg/mL)中での遠心沈降濃縮による、液液相分離からの結晶化および結晶構造解析に成功した。温度によって生成する結晶系が異なり、低温(10℃程度)では正方晶系結晶、室温(20℃程度)以上では斜方晶系結晶が成長することもわかった。解析をスタートしたばかりではあるが、放射光を利用した構造解析により、高品質なデータが得られた斜方晶系結晶中の構造は、塩析結晶とは異なり、Na+イオンを構造に含まない可能性が高い。これはむしろ、沈殿剤フリーの結晶構造に近い。 結晶成長界面の分子ステップの観察について、正方晶系結晶ではある程度うまくいっているが、斜方晶系結晶では基本的に棒状~針状のモルフォロジーを示すものが多いため、なかなかうまくいかなかったが、沈殿剤フリーの条件下で、直線的な分子ステップの観察に成功することができた。ただ、まだ再現性良くというところまでは到達しておらず、今後の課題としたい。 ステップモルフォロジーに関するモデル、および粒子の集合体が、結合エネルギーの違いによって、どのような規則構造をとるかというモデルについての論文も、佐藤によって論文化されている。これらは、今後、成長界面のステップモルフォロジーおよび、結晶多型条件を考察する際、強力な武器となる可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、鈴木は、ニワトリ卵白リゾチームの生理食塩水中での結晶化に成功し、その構造解析により、原子分解能で3次元立体分子構造を明らかにすることができた。より詳細な比較検討には、これから構造解析を進めていく必要があるが、取り急ぎ、第一関門は突破できたと考えている。 ただし、藤原氏の異動によって、マンパワーが不足したため、グルコースイソメラーゼに関してはまだ生理食塩水条件での実験を実施できていない。その点がクリアされれば、計画通りかそれ以上の進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
多型が観察されたのは予想外であった。構造の比較において、結晶形の違いはきちんと考慮する必要があるので、塩濃度、温度を振って、どの条件にどの結晶形が出現するかを示すモルフォドロムの作成をする必要がある。 さらに、それぞれにおいて、分子構造がどのように変化するかを比較考察しつつ進めていく必要があると考えている。 まずはニワトリ卵白リゾチームでその作業を行い、学部学生も含めてこのテーマを進めていく予定である。 グルコースイソメラーゼはその後に、リゾチームと同様の手順で進めていき、2019年度にはこの2つについてある程度まとめ、論文化する方向でいる。2020年度にαキモトリプシンへ移行できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月末の物理学会の会計が年度内に終わっていないことと、今年度の夏に行われる国際会議が、ハイシーズンの開催になるということで、旅費が予想していたよりも多く必要になることが大きな理由としてあげられる。 H31年度については、その分の経費を繰越金によって補填する予定である。また、そのほかの項目に関しては予定通りの使用計画で大丈夫と考えている。
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