研究課題/領域番号 |
18K04964
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
小曽根 崇 東京電機大学, 理工学部, 助教 (90595802)
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研究分担者 |
北澤 孝史 東邦大学, 理学部, 教授 (60246767)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホストーゲスト化学 / 配位高分子 / 錯体の合成 |
研究実績の概要 |
本年度は1次元鎖状構造のアクア錯体 Fe(H2O)[Au(CN)2]2 を用いて、配位子置換の可能性を検討した。 この固体状態の原料へピリジン系配位子溶液を含浸させることで H2Oからピリジンに置換できることを発見した。 この化合物はホフマン型2次元シート構造を構築できていることを確認した。このような固体のアクア錯体を利用した配位子含侵による二次元層状への自己組織化という新しい試みに成功した。本研究成果はスタート材料の次元性を高めた状態から反応させることで構造の多様化を抑制させることという新しいアプローチが可能なことを示している。 この成果について、「第100回日本化学会春季年会」にて報告した。 さらにアクア錯体として2次元層状化合物 Fe(H2O)[Ni(CN)4] を用いて同様の実験を行ったところ、結晶表面を二次元型スピンクロスオーバー配位高分子で被膜できることを確認した。 この被膜化によるスピン転移特性について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初のアプローチとは異なるが二次元層状化合物の配位子置換が可能なことを示すことは成功した。
しかしながら、様々な配位子を用いて、置換による系統的な相転移チューニングの可否はまだ、実行できていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画である、配位子 L の加熱脱離と配位子の交換は難しいことが分かったが、同時にアクア錯体の固相における配位子置換が可能なことも発見した。 よって、今後はこの性質を利用した新たな合成手法に絞って研究を遂行する。 ホフマン型層状化合物の一つである Fe(H2O)[Ni(CN4)]・G に着目して研究を進める。この化合物はアクア錯体であり、なおかつゲスト包摂空間を有している。従来のスピンクロスオーバーを示すホフマン型層状化合物はお互いの層がきれいにパッキングしてしまうため、層間の包摂空間を有していなかった。 そこでゲスト分子の入る空間を設計的に構築するために「アクア錯体で包摂化合物をあらかじめ作っておき、次に配位子置換反応によってスピンクロスオーバー化合物にチューニングするという手法を試みる。 これによって、「包摂空間を有する層状構造に構造制御されたスピンクロスオーバー錯体」の系統的な創出を可能とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた、出張(他大学への試料測定、学会参加等)が全て、新型コロナウィルスの影響により中止となった。 加えて、年度末に購入予定であった試薬等の消耗品についても、研究実施が滞ってしまったために購入できなかった。 翌年度の使用計画は、当該年度に購入予定であった物品等を購入する。加えて、大学に最新型の粉末X線回折装置が導入される予定のため、その装置に使う専用のサンプルホルダー作成費に使用する。
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