研究実績の概要 |
本年度は2次元鎖状構造のアクア錯体 Fe(H2O)[Ni(CN)4] を用いて、配位子置換の可能性を検討した。 二次元層状構造のアクア錯体 Fe(H2O)2[Ni(CN)4]・2G (G = 結晶溶媒) の0.2 mm2 程度のプレート状単結晶を作成する。この結晶に L (L = ピリジン, ピラジン 他) を各種溶媒に溶かした溶液を滴下、静置し配位子置換をおこなった。反応後のサンプルについて、単結晶X線回折、粉末X線回折、熱分析、各種分光分析等からサンプルの構造、組成を同定した。この結果、配位子の置換(および溶媒によっては結晶溶媒の置換も同時に起きている)を確認した 本研究成果はスタート材料の次元性を高めた状態から反応させることで構造の多様化を抑制させることという新しいアプローチが可能なことを示している。 加えて、この合成反応では、配位子に使用した溶媒に依存して配位子置換反応が進む(溶媒 = 水、エタノール)、全く進まない(溶媒 = アセトン、1,4-ジオキサン)サンプルが存在する。この結果は、Id 機構の反応速度モデルである eigen-wilkins 機構から考えると、溶媒の種類に依存して、解離するアクア配位子の溶媒中への拡散速度に違いが現れていると思われる。各種溶媒、各種置換配位子における固相-液相の配位交換反応の結果について検討を進めた。 加えて、アクア錯体 Fe(H2O)2[M(CN)4]・2G : M = Pt (1), Pd (2), Ni (3) (G = 1,4-Dioxane) の単結晶に対しコアシェル構造の構築を試みた。またコアシェル構造の新規構築手法として配位子置換反応を利用した構築を試みた。 この成果について、「第101回日本化学会春季年会」にて報告した。
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