アミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集特性を評価することを目的として,本年度は,緩衝溶液中で生じた凝集体が沈下して,基板表面の屈折率が増大する過程を集束表面プラズモンセンサーで測定する実験を継続し,測定時間が比較的長時間(10時間から15時間)に及ぶことで生じる測定値の変動を抑制する改善を行った.具体的には,超高開口数油浸対物レンズのイマルジョンオイル(屈折率1.78)の特性変化や,基板を保持する走査ステージの粗動メカで生じるドリフトに起因するフォーカス外れがもたらす測定値の変動を取り除くため,基板を光軸方向の走査して,反射光の共焦点検出を行い,これによって得られるプロファイルが,イマルジョンオイルの劣化(屈折率不整合)による影響を受けずに初期状態を保っていること,基板が最大強度を与える位置に保持されていることを確認して,屈折率測定を行った.その結果,測定値のばらつきを顕著に減少させることに成功した.また,Aβの凝集には環境温度の影響が大きいため,試料を配置する空間をヒーターで加熱し,36度に環境温度を保つことができるように装置改良を行った. 以上のように,測定プロトコル,実験環境の改善を行い,10μMのモノマーAβ溶液を用いた実験を行った結果, Aβ凝集体の沈下に伴って,表面プラズモンの伝搬定数が約0.4%の増大を示した後,一定となることを確認した.特に,伝搬定数が増大する過程において,測定値の揺らぎは十分に抑制されており,凝集及び沈下の特性を定量的に評価できることを確認した.
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