(1)S/Nの改善:200MHzの周波数で励起光とストークス光を強度変調した。LN強度変調器に印加されるバイアスとパルスのピーク電圧を微調することにより、ON/OFF時の消光比を300まで増加させた。この状態で長さ1.35mの光ファイバからのストークス光を30回繰り返し測定した結果、S/N=30(対数表示で15dB)の値を得た。ここで、S/Nはストークス信号の平均値と変動成分の標準偏差値との比で定義した。そこで繰り返し周波数を100~500MHzの間で変化させてS/Nの一層の改善を試みたが、30以上のS/Nの値を実現することはできなかった。この理由は、スイッチングに使用したLN強度変調器の消光比が300に制限されていたため、変調された漏れ励起光が局発光と干渉して多数のスパイクが発生してしたことによる。1,000以上の消光比を有する強度変調器が市販されており、将来的には本方式によって60程度のS/Nを実現できると考えられる。 (2)励起光のFM雑音の影響:本実験では、ファイバ中にブリルアングレーティングを発生させるために半導体レーザを使用した。当該半導体レーザからの出射光に周波数変動(いわゆるFM雑音)が存在すると、ストークス光測定時のS/Nが劣化することを理論的・実験的に証明した。具体的には、ストークス信号中の変動する成分に関する分散を摂動理論で計算し、分散の平方根である標準偏差がFM雑音スペクトルに依存することを見出した。次に、ファイバ型干渉計を組んでレーザ光のFM雑音スペクトルを測定した。このスペクトルを用いて予想されるS/Nを数値計算したところ、得られた理論値が実測値とよく一致することが判明した。今回の理論計算によって、所望のS/N値を実現するために励起用レーザ光に要求される性能、すなわち周波数変動の標準偏差値やスペクトル幅の値を計算することが可能となった。
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