研究課題/領域番号 |
18K04972
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
向井 剛輝 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10361867)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 量子ドット / 超格子 / 太陽電池 / キャリア寿命 / 配位子交換 / PbS |
研究実績の概要 |
本研究は、コロイド型半導体量子ドット(QD)を用いて、太陽電池への応用に適した新しいQD超格子膜の作製条件の検討を進め、その成果を実際に有機太陽電池に適用して、高いエネルギー変換効率を達成することを目的としている。PbS QDを用いて、以下の4つのサブテーマに基づき順調に研究を進めている。 (1)テンプレートの利用:昨年度、ガラス基板と光硬化性樹脂を用いたレプリカ法でテンプレートを作製することに成功したことを踏まえ、大面積化を検討している。しかし紫外線照射によるパターン転写の際、パターンマスク(ガラス基板)が光硬化性樹脂に接着してしまう事象が、大面積では完全には制御できていない。 (2)QD形状の制御:昨年までに、切頂8面体QDを用いて作製した超格子膜の良好な配向性を、X線回折測定(pole figure map)から確認できたことを踏まえ、今年度はQD超格子膜の発光寿命の評価を進めた。超格子形成によるキャリアの非局在化(すなわち中間バンドの形成)を示唆する長寿命特性を検証し、その結果について国際学会にて発表を行った。 (3)配位子交換:ブチルアミン配位子の場合よりもQD間隔を縮めることができる新たな配位子として硫黄(I-)を選定し、検討を進めた。オレイン酸から硫黄に配位子を置換する通常の方法では、QDの切頂8面体形状が損傷することが判明したため、硫黄を配位子としてQDを合成する手法に取り組んだ結果、良好な各種特性を示すQDを得ることに成功した。 (4)太陽電池の試作・評価:有機太陽電池に我々の試作したQD超格子膜を導入し、試作を続けている。検討の過程で、我々の沈降法で得られたQD超格子膜中においては、従来のスピンコート法によるQD膜中に比べ、太陽電池性能から推定されるキャリアの拡散長が大幅に増加していることを確認した。この結果を、国内学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より成果の学会発表を継続的に行なっており、高いレベルで研究は進捗している。いくつかの想定外の困難に直面しているものの、ほぼ当初の計画通りに研究は進展していると考えている。今年度だけで、英語論文発表1件、国際会議投稿発表3件、国内学会発表4件、国内学術シンポジウム発表1件、を行った。またその他にも、本研究に関連した内容の招待講演を海外で開催された国際学会において1件行い、国内でもシンポジウム講演を1件行うなど、本研究テーマの意義や研究成果の社会への開示も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要や進捗状況で説明したように研究はおおむね順調に推移している。しかし、設備・費用的な困難のため、当初の研究通りでは進められない事象がいくつか明らかになっている。それらについて一部は、研究の方向性を変えるなどして対処する。新たに取り組む内容として例えば、太陽電池のエネルギー変換効率をバンドダイヤグラムの観点から改善するために、ワイドギャップ材料によるQDの形成に着手した。これにより、超格子内の中間バンド(実際にはQDの高次準位が混成したバンド)から電極へのキャリアフローが改善する見込みである。このように、当初の目的を達成すべく、あらゆる手段を検討して研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の端数による少額の誤差であり、次年度の物品費にて使用する。
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