研究課題
コロイド型半導体量子ドット(QD)による新しいQD超格子膜について、4つのサブテーマに基づき研究を進め、その成果を実際に有機太陽電池に適用した。本技術が高いエネルギー変換効率を実現するために有望であることをある程度実証すると共に、今後の研究の方向性を示す成果を得た。具体的実績の概略は以下の通り。1.QD形状による面方位制御:ファセット付きPbS QDで作製した超格子膜の高い配向性をX線評価で確認すると共に、蛍光寿命評価で超格子形成によるキャリアの非局在化の増大を実証した。2.テンプレートの大面積化:光硬化性樹脂を用いたレプリカ法で大面積のテンプレートを作製するのが難しいことが判明したため、代替手段として、金属ナノ粒子の析出を用いたワンステップエッチング法に取り組み、大面積のテンプレートを簡便に実現することに成功した。3.短鎖配位子への置換:従来の有機配位子よりもQD間隔を狭めるための配位子として硫黄を選定した。QDの合成段階から硫黄を配位子とする手法に取り組んだ結果、良好な形状や光学特性を示すQDを得ることに成功した。4.太陽電池の試作:上記成果を取り入れたQD超格子膜を有機太陽電池に導入し、試作を進めた。まず、面方位制御を行ったQD超格子膜により、キャリア拡散長の増加によって太陽電池の性能が向上することを確認した。次いでワンステップエッチング法で作製した大面積テンプレートの搭載を検討したものの、最終年度COVID-19の影響で新プロセスの細部を十分に改善できずに、高い電池性能の実現は間に合わなかった。短鎖配位子へ置換したQD膜についても同様であった。5.その他:中間バンドから電極へのキャリアフローを改善するために、Ga2O3ナノ結晶膜を化学合成によって実現した。また、毒性金属を用いないコロイド型QDの作製にも着手し、ファセット付きSnSe QDの化学合成に成功した。
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Japanese Journal of Applied Physics
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Journal of Applied Physics
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