研究課題/領域番号 |
18K04974
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小森 雅孝 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (30392228)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水の発光現象 / 微弱光 / チェレンコフ光 / 陽子線治療 / 線量分布推定 / QA/QC |
研究実績の概要 |
チェレンコフ放射が起こる陽子線の閾エネルギー(約120 MeV)以下で照射した陽子線に起因する水の微弱な発光現象(以下、微弱光とする)は線量分布を比較的よく再現し、陽子線がん治療における簡便な三次元線量分布推定への応用が期待される。しかしがん治療で使用される200 MeV陽子線の場合、微弱光と波長分布が類似するチェレンコフ光も発生する。チェレンコフ光は線量分布を再現しないので、微弱光を用いた線量分布推定において除去する必要がある。本研究の目的は微弱光とチェレンコフ光の伝搬の違いを利用して微弱光成分だけを導出し、線量分布推定を行う手法を確立することである。 2020年度は新型コロナウィルス感染拡大対策のため、治療用陽子線を用いた測定が不可能となった。よって2019年度までに200 MeV陽子線を用いて測定した微弱光とチェレンコフ光の発光強度の角度依存性のデータに対して、即発ガンマ線に起因するチェレンコフ光のバックグラウンド事象の除去を行った。水に陽子線を照射すると核反応により即発ガンマ線を放出する場合がある。この即発ガンマ線が水と反応すると電子が生成される。この電子が発生するチェレンコフ光も微弱光を用いた線量分布推定においてバックグラウンド事象となる。陽子線が照射されていない領域での即発ガンマ線に由来するチェレンコフ光分布を、陽子線が照射されている領域での発光分布から差分することで、バックグラウンド事象を除外した。陽子線の照射方向に対し70°から110°の方向で発光を撮影したデータに対して即発ガンマ線経由のバックグラウンド事象の除外を行ったところ、90°~110°方向の発光量が5%ほど小さくなった。このことから、より正確な発光量の角度分布依存性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はチェレンコフ光が発生しないエネルギー120 MeV以下の陽子線を用いて、微弱光の発光強度角度依存性の測定を行う予定であった。しかし新型コロナウィルス感染拡大対策のため、医療施設である名古屋陽子線治療センターでの実験が不可能となった。また教育や運営等の研究以外の業務も増えたため、研究に費やすことができる時間が減少した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染拡大対策が継続しているので、名古屋陽子線治療センターでの実験の目途が立たない。よってモンテカルロシミュレーションを用いた計算で研究を進める。水ファントムに200MeV陽子線を照射した際のチェレンコフ光の発光強度角度依存性を、シミュレーションコードGeant4を用いて計算し、実測値と比較することで今まで測定した200MeV陽子線による発光強度角度依存性の測定結果について、さらなる検証、精度向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にも名古屋陽子線治療センターで実験を実施し、国外の国際学会で研究報告を予定していた。しかし新型コロナウィルス感染拡大対策のため実験の実施が不可能となった。また国際学会もWEB開催となって旅費が不要なので、次年度使用額が生じた。 2021年度も名古屋陽子線治療センターでの実験実施が不確定なため、モンテカルロシミュレーションによる計算で研究を実施する。シミュレーション計算でデータを追加して、論文投稿および国際学会での研究報告を実施する。モンテカルロシミュレーション用PCの購入と英文校正、学会参加費等の使用を計画している。
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