デジタル・ホログラフィー(DH)は、精密機器の表面形状測定に広く用いられているが、測定可能な最大凹凸は波長(nm)オーダーに制限される。本研究では、多数の光周波数モードが櫛の歯状に並んだ光周波数コムに対して高速モード抽出を行い、広いダイナミックレンジで高速に合成波長を生成することで、mmオーダーの凹凸をnmの精度でリアルタイムに計測可能なコヒーレント・カスケード・リンク形マルチ合成波長DHを提案している。 前年度までは、まずは提案手法を実現するための光コムシンセサイザーの開発を行った。光コムシンセサイザーは、光周波数コム光源と2次元波長分散素子、そして空間光変調器を組み合わせた、任意光コムモード操作システムである。これにより、高速モード抽出による合成波長生成を可能にする。本研究では、変調器型光周波数コム光源と、VIPAと呼ばれる1次元波長分散素子及び回折格子を組み合わせた2次元波長分散素子、液晶空間光変調器で高速並列モード操作を実現させた。また、開発した光コムシンセサイザーとDHを組み合わせた、コヒーレント・カスケード・リンク形マルチ合成波長DHシステムを構築し、原理確認実験として段差計測を行った。前年度までの研究成果については、解説論文1本を執筆し、4件の学会発表を行った。 最終年度では、前年度までに実現できなかったnmオーダー精度での段差計測を実現するために、より広帯域な光周波数コム光源を用いて、コヒーレント・カスケード・リンク形マルチ合成波長DHシステムの再構築を行い、段差計測を実行した。その結果、数10nmオーダーの精度で段差計測を行うことに成功した。研究成果については、国際会議で1件発表した。 今回の研究ではリアルタイム計測まで行うことができなかったが、より高速動作可能な空間光変調器と光検出器を同期することができれば、高精度リアルタイム計測を実現できる。
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