本研究の目的は超高速現象の時間的発展を計測するために提案されたチャープパルスデジタルホログラフィーの実験的検証を行うことである。初年度にパルス幅35 fsのパルスを用いて時間差3.67ピコ秒の二つの振幅・位相画像が静止物体において得られることを実証した。次年度以降はチャープパルスデジタルホログラフィーを用いて実際に超高速現象のホログラム記録および再生を目指して実験を行った。実験ではパルス幅35フェムト秒の超短光パルスを二つのパルスに分割し、一方をガラスブロックに透過させてチャープパルスの参照光を発生させた。他方のパルスは干渉計を用いて、さらにそれらを3.67ピコ秒の遅延時間を持つ二つのパルスに分割して物体光とした。実験としては第一に高圧力のノズルから噴射する空気の位相画像の測定を多数のパルスの平均画像を用いて行った。この画像では位相が増大している領域の定常的なパターンが圧力と共に変化することが観測され、その屈折率変化により圧力分布が計測した。第二にスパークプラグに高電圧を印加する電子回路を試作し、それにより生じたスパークプラグの電極間の火花放電の位相画像の測定をシングルショットパルスにより行った。この実験においては放電による自由電子の発生で位相が減少している画像が計測され、その屈折率変化から自由電子の密度を計測できた。第三に元のパルスの一部を高い光学的非線形性を持つ液体に集光し、それによる位相変化を測定する実験に着手した。この実験では光パルスの集光による位相変化に関する知見を得た。これらの実験を通して得られた位相画像には参照光と物体光の傾きに起因する位相の歪みが生じることが見いだされた。そして理論解析によりその補正のための数式を得た。以上の結果はチャープパルスデジタルホログラフィーが高速現象の計測に極めて有用であることを実証していると考えられる。
|