研究課題/領域番号 |
18K04985
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鈴木 将之 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60622371)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 時間伸長フーリエ分光 / モード同期ファイバレーザ / 超高速分光 / ソリトン / 光孤立波 |
研究実績の概要 |
今年度は、非線形偏波回転のモード同期ファイバーレーザーにおいて、Soliton Moleculesによるスペクトル形状の急速な変化を観測した。共振器内の分散値をほぼゼロに設定したのちに、共振器内の波長板を制御することで、ノイズライクパルスのセルフスタート化に成功した。この共振器条件において、励起LD強度を変化させると動作モードがノイズライクパルスからSoliton MoleculesそしてCW発振へ変遷することを確認した。特にSoliton Molecules動作時において、スペクトル形状が10往復ごとに元の形状に戻ることを確認した。これは、共振器内におけるパルスエネルギー変動により自己位相変調によるスペクトルの広帯域化が起因すると考えている。この動作に関しては、さらに実験を続けて、その理解に取り組む。 一方、Ybファイバーチャープパルスシステムから出力された超短パルス光をフォトニック結晶ファイバーに入射してスペクトルの広帯域化を行い、得られたスペクトルの波長740nmから940nmにおけるスペクトルのシングルショットスペクトル計測を行った。その結果、入射レーザーのピーク強度が低くなるとショットごとのスペクトル形状の変化が大きくなることを直接的に観測した。 時間伸長フーリエ分光において、広いスペクトル領域を高い分解能で計測するためには、パルスとパルスの時間間隔を広くする、すなわち繰り返し周波数が低い動作が望まれる。そこで低繰り返しかつ高安定動作が実現できる非線形増幅ループミラーを用いたモード同期Ybファイバーレーザーの開発を行い、出力40mW、繰り返し周波数6MHz、パルス幅120fs動作に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、異動に伴い実験装置の再立ち上げを行った。実験環境の再立ち上げは順調に進行し、現在は以前と変わらない環境で研究を進めることができている。可視域から赤外域における時間伸長フーリエ分光システムの構築を行い、シングルショットスペクトル計測を通して、フォトニック結晶ファイバから出力される可視光はショットごとにことなる形状を有することを明確とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、このモード同期動作直前に観測される光パルス形成の物理機構の理解に取り組む。またYbファイバーチャープパルス増幅システムからの超短パルス光をフォトニック結晶ファイバに入射した時に得られる超広帯域光の生成メカニズムに関しての理解も進める。同時に特殊形状ファイバを用いてショットごとにスペクトル形状の変化を有しない超広帯域光の開発を行う。信号強度の向上に関してはアンプを用いて改善できたが、十分ではないため、今後はフォトニック結晶ファイバに入射するレーザの出力を高くして、さらなる信号強度の向上を目指す。さらに2年目に構築したNALMの発振器を用いて、時間伸長フーリエ分光における広い領域における高い分解能動作にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に学会参加を予定していたが、コロナウィルスのため中止となり、次年度使用額が発生した。今年度は、時間伸長フーリエ分光システムにおける信号の強度を増強するために超広帯域光の強度増大を行うためにファイバー型光学素子を導入して増幅器の構築を行う。同時に特殊ファイバーを制作して、スペクトル形状が平坦な広帯域スペクトル生成に関する研究にも取り組む。 また得られ成果をオープンアクセスジャーナルに投稿するための出版費にも支出を予定している。
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