高効率な光電変換素子においては、非輻射再結合損失が抑制され輻射再結合が主要な損失要因となる。レーザーパワー変換器や集光型太陽電池などに用いられる多接合型光電変換素子は、多数のpn接合が直列接合された光電変換素子であり、pn接合における発光(輻射再結合)がそのpn接合や異なるpn接合で再吸収されるフォトンリサイクリング効果や発光結合効果が光電変換特性に重要な役割を果たすようになる。多接合型光電変換素子の発光結合効果により、生成光電流が照射光強度に対し非線形に増大するなど、従来の光電変換素子にない新しい特性の発現が期待されている。本研究では、この発光結合効果の微視的物理機構を解明することが目的である。 前年度までの研究において3端子型のメカニカルスタック多接合太陽電池を用いることで、発光結合効果をより直接的に精密に測定し得ることを示す結果を得ており、昨年度には裏面に第2および第3電極を有した裏面コンタクト型の3端子メカニカルスタック多接合太陽電池について作製を進めてきた。本年度は、系統的な実験およびデバイスシミュレーションを実施することによって、裏面コンタクト型3端子タンデム太陽電池の光電変換性能を包括的に理解するとともに、発光結合効果の機構解明を進めた。特に、様々な光照射条件において多接合太陽電池において電流不整合が発現した際の振る舞いや、電気的な接続条件によってpn接合への電圧印加条件が異なるような場合における光電変換特性を調べた。これにより、発光結合効果が光電変換性能やその性能評価に及ぼす影響について解明を進めた。
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