研究課題/領域番号 |
18K04988
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 民武 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (00351742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強結合 / プラズモン / 表面増強ラマン散乱 / 表面増強蛍光 / 共振器電磁量子力学 |
研究実績の概要 |
金や銀などのナノ粒子が2つ連なった隙間に存在する数nm^3の領域は、ホットスポット(HS)と呼ばれて、プラズモンと光の共鳴によって光の状態密度が増大し、単分子分極とプラズモン分極の強結合や超高速プラズモン増強蛍光などの極限的な量子光学的現象が観測可能となる。前年度は、これらの現象を定量的に取り扱える理論的、実験的な手法の開発、すなわち「分子の多準位性」と「高次のプラズモンモード」を反映させた共振器量子電磁力学モデルを新たに構築し、強結合状態や超高速プラズモン増強蛍光を定量評価可能とした。ところで一分子の強結合系では分子の電子状態が大きく変調を受け通常起きない光化学反応が起きる可能性がある。その為には強結合系の光吸収を評価しなければならない。しかしながら従来は光散乱等で強結合系を評価してきた。今年度は、この共振器量子電磁力学モデルと前年度開発した分光測定装置、すなわち、顕微鏡、分光器、励起光源を組み合わせた単一銀ナノ粒子2量体のプラズモン共鳴分光測定装置を用いて強結合系の光吸収特性の測定を可能とした。 ところで、共振器量子電磁力学モデルでは分子や電磁場は現実より単純化されているため、より現実に近いモデルで強結合系を評価する必要もある。そこで、古典電磁気学モデルで強結合系を再現し共振器量子電磁力学モデルの評価を行った。古典電磁気学では真空の電磁場の揺らぎは物質の誘電率に繰り込まれている。評価の結果、古典電磁気学モデルで共振器量子電磁力学モデルと等しい結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の今年度の予定を遂行し、その段階でまとめ論文化し受理された。 実験:顕微鏡、分光器、励起光源を組み合わせ単一銀ナノ粒子2量体のプラズモン共鳴の光吸収スペクトルを測定可能とした。 理論:古典電磁気学を用いて強結合系の光応答を再現可能とし、共振器電磁力学のJaynes-Cummings(JC)モデルと比較可能とした。
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今後の研究の推進方策 |
計画書に沿って、強結合系となっている単一銀ナノ粒子2量体のプラズモン共鳴のより詳細な分光測定とその解析を行う。プラズモニックナノワイヤー2量体を用いた強結合系の実験と理論評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理論研究が想定外に進んだために実験を次年度に変更したため、実験で購入する物品の分だけ差が生じた。差額は今年度に使用予定である。
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