研究課題
金や銀などのナノ粒子が2つ連なった隙間に存在する数nm^3の領域は、ホットスポット(HS)と呼ばれている。HSではプラズモンと電磁場の真空揺らぎとの共鳴によって光の状態密度が増大し、単分子分極とプラズモン分極の強結合や超高速プラズモン増強蛍光などの極限的な量子光学的現象が観測可能となる。しかし、これらの現象を定量的に取り扱える理論的、実験的な手法はまだ開発されていない。本研究では「分子の多準位性」と「高次のプラズモンモード」を反映させた共振器量子電磁力学(QED)モデルを新たに構築し、顕微分光実験で取得された強結合状態や超高速プラズモン増強ラマン・増強蛍光のスペクトルを評価可能とした。共振器QEDモデルを用いて結合エネルギーの変化とともに増強スペクトルが変化してゆく様子を定量的に再現することに成功した。HSとして物理的に不安定なナノ粒子2量体間隙の代わりに「ナノワイヤ2量体の間隙」を利用することで、HSを一次元方向に10マイクロメートル程度(10^4倍に)拡大し上記の現象を安定的に測定可能とした。そしてHSにおけるプラズモン分極と分子との強結合状態の吸収分光を開発し、強結合状態の光吸収とその後に起きる光化学反応を取り扱える顕微分光法を開発した。最後に、共振器QEDモデルを電磁場の色素コートされた銀二量体の古典電磁気学モデルで検証することで、分子の多準位性と高次のプラズモンモードが物質の誘電率と形状によって正しく再現できることを確認した。
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