研究課題/領域番号 |
18K04990
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小崎 完 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60234746)
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研究分担者 |
渡辺 直子 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20624711)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / 多機能化金ナノ粒子 / 移行遅延 / 天然バリア |
研究実績の概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分において、圧縮ベントナイトや母岩は、処分場から生物圏への放射性核種の移行を遅延させるバリア機能を有することが期待されている。従って、それら材料のバリア性能を評価することが重要な研究課題の一つである。 本研究では、このバリア性能を、金ナノ粒子を用いて評価する新たな手法の確立を目標として、3年の研究期間に、課題(1) 天然・人工バリア中の多機能化金ナノ粒子の移行挙動研究、課題(2) 多機能化金ナノ粒子を用いたバリア材中の化学的雰囲気の原位置測定に関する実験及び考察、を行う計画である。 研究2年目となる令和元年度は、前年度に引き続き、比表面積の大きな金微粒子の表面を特定の配位子(ポリエチレングリコール)で覆い、任意の粒子サイズで可溶化、安定化を図った多機能化金ナノ粒子を用い、天然バリア模擬材料であるケイ砂を充填したカラム中の移行挙動試験を実施した。この結果、昨年度見出した、ケイ砂を充填したカラム中での金ナノ粒子の移行が、サイズの大きな金ナノ粒子ほど遅延する現象、またカラム透過後の金ナノ粒子の粒径分布が粒子サイズが大きなものほど顕著に変化する現象の再現性を確認した。さらに、これらの現象はケイ砂と金ナノ粒子間に、静電的な相互作用やvan der Waals力とは別の相互作用が働いており、それがケイ砂表面の電荷の不均一性に起因する可能性を明らかにし、その成果を学術論文に纏めて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3年の研究期間に、課題(1) 天然・人工バリア中の多機能化金ナノ粒子の移行挙動研究、課題(2) 多機能化金ナノ粒子を用いたバリア材中の化学的雰囲気の原位置測定に関する実験及び考察、を行う計画である。 研究2年目の令和元年度は、課題(1)として、前年度に実施した多機能化金ナノ粒子のバリア材料(ケイ砂)を充填したカラム中の移行挙動試験を、また、課題(2)として、試料透過後の多機能化金ナノ粒子の状態変化を分光法による分析を継続し、ケイ砂を充填したカラム中の金ナノ粒子の移行挙動を、金ナノ粒子とケイ砂との微視的な相互作用の観点から検討し、学術論文に纏めて発表した。一方、ベントナイト試料と金ナノ粒子との相互作用に関する実験にも着手したことから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる令和2年度は、これまでの研究をさらに進めるとともに、金ナノ粒子を用いたバッチ式収着試験においてケイ砂およびベントナイト試料への金ナノ粒子の収着挙動を詳細に調べる。また、収着試験後の固相表面のSEM観察を行い、金ナノ粒子と固体表面の相互作用に関する考察を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入した消耗品等によって今年度の実験を実施できた。また、多くのエフォートを論文執筆に割いたことで、実験に要する費用が予定より減額となった。一方、予定していた研究打合せ等の国内および海外旅費が、新型コロナウイルスの感染拡大によって中止となった。これらは次年度の実験およびデータ整理補助員の人件費として支出する計画である。
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