研究課題/領域番号 |
18K04991
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
泉 佳伸 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (60252582)
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研究分担者 |
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90568883)
砂川 武義 福井工業大学, 工学部, 教授 (60329456)
小嶋 崇夫 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70360047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA / 線量測定 / 感度制御 |
研究実績の概要 |
DNA等の生体分子を用いて放射線量を測定する際に課題となる制度の向上と感度の向上を検討した。 マイクロ波誘電吸収法を用いた評価手法については、トリブチル酢酸の過剰添加によって資料溶液のpHが変化してしまい、それに伴って測定結果に悪影響を及ぼした。そこで、低濃度のトリブチル酢酸を添加したが、pHが測定結果に影響を及ぼさない様な低濃度では増感効果がほとんど得られなかった。溶媒となる緩衝溶液の種類を変えて実験を行うことを検討したが、標準としているTE緩衝溶液の代わりとなり得る様なよい緩衝溶液の選定には至らなかった。 蛍光修飾したオリゴヌクレオチドを用いた実験では、1本鎖オリゴヌクレオチドの他、2本鎖のオリゴヌクレオチドを試料として用いた。これは、2本鎖にすることによる分子内エネルギー移動効率の上昇を狙えるほか、2本鎖の分子では1本鎖切断と2本鎖切断が生じ、それに伴うエネルギー移動効率の低下に影響を与え、その結果、測定感度に影響を及ぼすと予想したからである。結果として、1本鎖の分子と2本鎖の分子では感度に違いがみられることを見出した。また、オリゴヌクレオチド鎖の塩基配列を変えたものを数種類用意し、塩基配列によって主鎖切断の収率が変化することを利用して感度の制御を試みた。その結果、若干ではあるが塩基配列を制御することによって感度に影響を与えるという基礎的な理解が得られた。 以上より、生体分子材料の放射線化学反応においてもリソグラフィーの分野で行われているほどではないが感度の制御が可能であることが分かった。これは、線量測定の為の基本的理解としては重要であり、また、放射線治療や放射線影響、放射線防護の分野においても影響の低減(放射線防護の目的)や感度の向上(治療線量の低線量化)へと波及していく可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波誘電吸収法での実験では 最適な緩衝溶液を選定するには至らなかったが、蛍光修飾ヌクレオチドを用いた実験研究では、1本鎖と2本鎖のオリゴヌクレオチドを用いてその感度の違いを確認した。また、塩基配列を変えることによって感度を制御することが出来ることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
生体分子を用いた線量測定では、従来からあるTLD線量計やOSL線量計等の物理的計測方法と比較すると圧倒的に感度が不足している。 そこで、個人被ばく線量測定の様なごく低線量の領域をターゲットとした線量計を目指すのではなく、放射線治療や放射線プロセシングの分野等の様な比較的大線量をターゲットとした線量測定に応用できる様な方向性をも考慮に入れ、用途に応じた感度と測定方法についても整理していく必要がある。 最終年度に当たる令和2年度は、応用先とそれに応じた利用例を提示しうる様な総合的な検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗、実験の進行に伴い、必要とする試薬類に軽微な変更が生じた。 それに伴って差額が生じた。 令和2年度にはこれまでに得たデータを総合的に整理しなおして検討を加えるために、アルバイト謝金としてその一部を使用する計画である。また、追実験や再現性確認等、確認が必要であるので、入手してごくわずかに残っている(古い)試薬を用いた場合と比較するために試薬類を購入して確認する計画である。
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