研究課題
令和元年度までは,3.0mGy/h(総線量0.5Gy)の低線量率γ線照射が強制水泳試験に伴い増加する無動時間を抑制することなどを明らかにした。令和2年度は,低線量γ線照射と強制水泳試験が脳・肝臓・腎臓・肺に及ぼす酸化ストレスの影響を評価した。すなわち,マウスにsham(擬似)照射,並びに0.6 mGy/h,3.0 mGy/hで7日間,総線量が0.1 Gy,0.5 GyになるようCs-137のγ線源を調整し各々照射した。その後,直径10cm,高さ25cmの円柱の中に深さが15cmになるよう25±1℃の水を入れ,マウスに10分間の強制水泳をさせた。2,3,4,5日目にも同様に強制水泳をさせた。強制水泳試験も照射もしていない群をcontrol(無処置)とした。最後の強制水泳試験終了後に炭酸ガスの過剰吸入により安楽死させ,脳・肝臓・腎臓・肺を摘出した。脳・肝臓・腎臓・肺中のsuperoxide dismutase (SOD)・カタラーゼ(CAT)・総グルタチオン(t-GSH)・総タンパクの各量を分析した。その結果,脳中のSOD・CATの両活性と腎臓中のt-GSH量は,有意差はないものの線量に依存して漸増傾向にあった。肝臓中のSOD活性とt-GSH量は,3.0 mGy/h照射により有意に減少した。腎臓中のSOD活性は,sham照射の方がcontrolに比べ有意に低かった。肺中のCAT活性は3.0 mGy/h照射により有意に増加した。以上などの所見より,強制水泳試験と低線量率γ線照射の併用による酸化ストレスの程度は臓器により異なることなどが示唆できた。平成30年度から令和2年度の成果2件を論文投稿し,Journal of Radiation Research誌に掲載され,Acta Medica Okayama誌に受理された。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Acta Medica Okayama
巻: 75 ページ: 169-175
Journal of Radiation Research
巻: 61 ページ: 517-523
10.1093/jrr/rraa022