研究課題/領域番号 |
18K04998
|
研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 茂和 福島工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (40399259)
|
研究分担者 |
高田 英治 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (00270885)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 繊維強化プラスチック / 除染廃棄物 / 放射線遮蔽 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,東日本大震災による福島第一原子力発電所事故からの復旧・復興に向けて,福島県内で実施された除染によって大量に発生した除染廃棄物を運搬する際の,住民の安心安全確保のために,放射線を遮蔽することができるダンボール構造の複合材料と,着脱可能なGPS機能を有した放射線検出器を開発し,リアルタイムモニタリング可能な除染除去物運搬ケースの開発を行う.2018年度は主に,(1)ガラスマットを用いた放射線遮蔽効果の評価,(2)遮蔽効果へ与える金属元素と濃度の影響,(3)曲げ試験評価,(4)放射線計測システムの概念設計を行った. (1)はマット状のガラス繊維,積層用低臭気ポリエステル樹脂を用いた.酸化銅粉末を樹脂重量に対して9.1%,16.7%,33.3%,44.4%添加したFRPを作製し,セシウム137密封線源を使用して遮蔽効果の評価を行った.比較材料として厚さ1mmの鉛板を用いた.その結果,44.4%添加したFRPで1mmの鉛板と同程度の遮蔽効果を確認できた.また,作製したFRPの断面を,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行い,繊維と樹脂,金属粒子の分布の様子をエネルギー分散型X線分光法(EDX)を使って母材中にどのように銅粒子が分布しているかを調べた.銅粒子は樹脂中よりガラス繊維近傍に多く存在していることが確認でき,樹脂中へ均一に分散させることが遮蔽効果を高めることにつながると推測している. (2)は酸化銅,硫酸バリウムを用いて比較を行った.明確な違いは確認できず,樹脂内部での分散方法を検討する必要がある. (3)はFRPの三点曲げ試験を行い曲げ強度の評価と曲げ破壊の観察を行った. (4)はGPS機能と無線通信機能を有した放射線計測システムの概念設計と試作を行いつつ,GPS機能を有する無線通信部品の調査を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FRPに金属粉末を添加することで,遮蔽効果を付与することができることを確認できた.また,樹脂中へ金属粉末を沈殿させずに均一に分散させることが遮蔽効果の向上につながると考えている.曲げ強度については,金属粉末の添加によって曲げ強度が低下することを確認したが,アルミ合金とほぼ同程度であったことから,除染廃棄物運搬容器でも使用可能な強度を有していることがわかった. GPS機能と無線通信機能を有した放射線計測システムの概念設計と試作ができた.
|
今後の研究の推進方策 |
樹脂中への金属粉末を沈殿させずに均一に分散させることが鍵となることから,金属粉末の分散方法について検討を行い,実験によりその影響を確認する. また,原子量の異なる酸化銅と硫酸バリウムを添加したFRPで遮蔽効果に大きな違いが確認できなかったことから,遮蔽効果の評価方法,放射線計測方法について,再度検討を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費において,材料切断のための刃物や繊維,樹脂を購入する予定であったが,購入済みのものを使用したことで,新規に購入する必要が無かったため,次年度使用額が生じた.2019年度は新たに繊維や樹脂,ホモジナイザーなどを購入し,次年度使用額を生じない予定である. 旅費については,福島高専所有の簡易放射線計測システムを使用した評価を主に実施したため,富山高専に出張しての放射線計測が無かった.簡易放射線計測システムでは信頼性が低いため,2019年度は富山高専に出張して放射線計測を実施する予定である.
|