東日本大震災による福島第一原子力発電所事故からの復旧・復興に向けて,福島県内で実施された除染の結果,1立方メートル入りの袋で約746万袋の除染除去物が各自治体の仮置き場で保管されている.それらは福島第一原子力発電所近くに建設される中間貯蔵施設へ運搬される予定であるが,地域住民は運搬時の放射線による人体などへの影響を不安視している.そこで,本研究課題では除染廃棄物運搬時に住民の安心安全確保のために,放射線を遮蔽することができるダンボール構造の複合材料と,着脱可能なGPS機能を有した放射線検出器を開発し,リアルタイムモニタリング可能な除染除去物運搬ケースの開発を行う. 具体的には,ガラス繊維を織り込んでダンボール構造FRPを作製し,母材となる樹脂に金属粉末を添加することで放射線の線量低減効果を高める.また,小型の放射線検出器を開発し,GPSによる位置測定と無線による測定データを送信するシステム開発を行う. 金属粉末添加なしの樹脂,硫酸バリウム粉末入りの樹脂,スズ粉末入りの樹脂を用いて段ボール構造ガラス繊維を1層構造,2層構造としてFRP遮蔽材を作製した.セシウム137密封線源を用いて遮蔽効果を評価した結果,平均で5%程度の遮蔽効果が得られた. また,GPSを用いて線量率測定結果と位置情報をクラウドサーバーへ送信する装置を開発した.クリアパルス社製放射線測定器から10秒毎に出力される線量率をGPS受信機で得られた位置情報をWi-Fi送信機付マイコンへ送信し,クラウドサーバーへ情報を自動でアップロードさせた.クラウドサーバー側では,自動で線量率は折れ線グラフ,位置情報は地図上にピンで表示され測定者はその地点の線量を把握できるようにした.
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