研究課題/領域番号 |
18K05000
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
高松 邦吉 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター, 研究副主幹 (70414547)
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研究分担者 |
守田 幸路 九州大学, 工学研究院, 教授 (40311849)
劉 維 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70446417)
松元 達也 九州大学, 工学研究院, 助教 (90325514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 格納容器 / 冷却設備 / 受動的安全性 / 輻射 / 自然対流 / 高温ガス炉 / HTGR / 新型炉 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所事故(以下、福島事故)後、炉心溶融が生じない高温ガス炉や新型炉への期待が高まっており、事故時に炉心から崩壊熱を間接的に除去できる受動的冷却設備の役割が重要となった。本研究では、動的機器および非常用電源等を必要とせず、福島事故のようにヒートシンクを喪失することもなく、通常運転時の放熱を最小限にして、事故時の崩壊熱を受動的に除去できる新しい冷却設備(以下、冷却設備)を提案する。また、自然対流よりも、できるだけ放射冷却を用いた信頼性の高い冷却設備を開発する。本冷却設備の概念の成立性を解析的および実験的に示し、原子炉圧力容器(以下、RPV)表面から放出される熱を除去可能であることを明らかにする。 【解析】 平成29年度までは最も厳しく温度を高めに見積もるよう、圧力容器室から除熱ができないような断熱境界条件を設定した。平成30年度は、断熱境界条件を変更し、圧力容器室からの放熱効果も考慮した。その結果、高温工学試験研究炉(HTTR)で要求されるRPV表面からの除熱量1.2~2.5kW/m2を上回るだけでなく、実用高温ガス炉で要求されるRPV表面からの除熱量3kW/m2を大きく上回り、約2.3倍の除熱量7kW/m2を解析的に達成することができた。 【実験】 平成30年度は、輻射率を変更するパラメータサーベイ実験を行った結果、実用高温ガス炉で求められるRPV表面からの除熱量3kW/m2を大幅に上回り、約2.7倍の除熱量8.2kW/m2を実験的に達成することができた。 このように、本冷却設備の成立性および有用性を解析的にも実験的にも実証することができた。本冷却設備は、全く新しい形状を採用しているため、受動的安全性の研究分野に対し、新たな事故時崩壊熱除去方法を提案するものとなる。学会発表については今後も積極的に報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施計画に沿って研究を実施した結果、本冷却設備の成立性および有用性を解析的にも実験的にも実証することができた。平成30年度、解析については、断熱境界条件を変更し、圧力容器室からの放熱効果も考慮した。その結果、高温工学試験研究炉(HTTR)で要求されるRPV表面からの除熱量1.2~2.5kW/m2を上回るだけでなく、実用高温ガス炉で要求されるRPV表面からの除熱量3kW/m2を大きく上回り、約2.3倍の除熱量7kW/m2を解析的に達成することができた。また、実験については、輻射率を変更するパラメータサーベイ実験を行った結果、実用高温ガス炉で求められるRPV表面からの除熱量3kW/m2を大幅に上回り、約2.7倍の除熱量8.2kW/m2を実験的に達成することができた。さらに、それらの成果の一部を、Annals of Nuclear Energy、The 11th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS11)および日本原子力学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に実施した詳細解析および実験を参考に、今後もスケールモデル(伝熱試験装置)を用いた実験をさらに進め、実用高温ガス炉で求められるRPV表面からの除熱量を大幅に上回る除熱量を達成できることを示す。また、冷却室の表面だけではなく、RPVおよびセーフティベッセルの表面も、μmオーダーの多数の微細加工にすることで、高温ガス炉のみならず、新型炉および国内外に多数存在する他の炉型へも応用可能であることを証明する。一方、空気がよどまない曲線形状を採用した結果、本冷却設備内の空気の速度分布は最大約1.2 m/sであった。つまり、ダクト(煙突)等による煙突(チムニー)効果を用いて、自然対流を促進させる必要がないこともわかっている。反対に、自然対流を促進させると、除熱能力を高めることができることを証明する。さらに、除熱量を保ちながら、本冷却設備の高さを低くする方法も検討する。なお、冷却設備の安全性に係る耐震性の問題については、別途検討しており、一般的な耐震・免震・制震技術を用いれば、耐震性は十分にあり、問題ないことを証明する。学会発表については、令和元年も積極的に報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度において見積り合わせによる物品購入を行った結果、想定金額より安価で購入できたため、次年度の使用額が生じることとなった。 (使用計画) 令和元年の旅費の一部として使用する。
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