研究課題/領域番号 |
18K05002
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
多田 健一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (50714317)
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研究分担者 |
遠藤 知弘 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50377876)
長家 康展 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (20391310)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率テーブル / ラダー法 / 統計誤差 / 摂動 / ランダムサンプリング |
研究実績の概要 |
個々の共鳴が分離できない非分離共鳴領域の自己遮蔽効果を考慮する手法として、確率テーブルがある。この確率テーブルを作成するためには、乱数を用いて非分離共鳴領域の共鳴構造を確率的に再現する必要があり、この共鳴構造を再現する回数をラダー数と呼ぶ。確率テーブル作成手法の統計誤差評価の第一歩として、ラダー数の違いが確率テーブルに与える影響を評価した。なお、本研究に先立ち、確率テーブルの比較方法についても検討した。確率テーブルのみを相対差異で比較した場合では、確率の小さいビンの差異が際立つなど、比較方法によって差異の傾向が大きく変わることが分かった。粒子輸送計算での確率テーブルの利用などを考慮した結果、確率テーブルと平均断面積の積の絶対差異を指標とすることが適切であることが分かった。まず、非分離共鳴領域の自己遮蔽の影響の大きいU-235とU-238に対してラダー数を50000とした結果を参照解とし、ラダー数の違いが確率テーブルに与える影響を評価した。その結果、ラダー数1000以上の結果は参照解の結果とほとんど変わらないことが分かった。この結果を基にJENDL-4.0で非分離共鳴領域が定義されている全核種において、ラダー数1000の結果を参照解とし、ラダー数の違いが確率テーブルに与える影響を評価した。その結果、ラダー数100程度で参照解とよく一致することが分かった。 本研究の応用として、連続エネルギーモンテカルロ計算コードで利用されているACE形式の断面積ライブラリに摂動を加えるツールを開発した。本ツールでは、ランダムサンプリング法を用いて断面積やν値、核分裂スペクトルに共分散データ基づいて摂動を与え、核特性の不確かさを評価する。本ツールの妥当性を評価するため、本ツールで得られた実効増倍率の不確かさを摂動論に基づく決定論的手法と比較したところ、統計誤差の範囲内で一致することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により、確率テーブルの統計誤差を評価する際の指標として、確率テーブルと平均断面積の積を用いればよいことが分かった。また、確率テーブルの統計誤差評価の第一歩として、適切なラダー数の評価を行うことができた。特に平成30年度の研究により、ラダー数を多くとる必要があるのはU-235やU-238のような重核ではなく、Ge-73やSr-90、I-135、Hg-204など中重核であることが分かったのは大きな成果である。今後は、統計誤差評価において、重核だけでなく、平成30年度の研究で分かった中重核についても注目して検討していく必要がある。 現在、研究分担者と共に確率テーブル作成手法の統計誤差を評価する手法の開発を進めており、当初の実施計画通りに研究を進めている。また先行して確率テーブルの差異が放射線輸送計算に与える影響の評価に取り掛かるなど、当初予定を前倒しして研究を進めている部分もあることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在進めている確率テーブル作成手法の統計誤差評価手法の開発を進める。また、研究代表者が開発している核データ処理コードFRENDYに開発した統計誤差評価手法を実装し、統計誤差を指標とした確率テーブルの作成を実現する。 開発した統計誤差評価手法を非分離共鳴領域の自己遮蔽効果の影響の大きいU-235やU-238、そして平成30年度の研究で判明したラダー数を多く取る必要のある中重核に適用し、ラダー数による統計誤差の推移を評価する。また、併せて確率テーブルの統計誤差が放射線輸送計算に与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入したサーバーの費用が当初予定よりも安くなったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については平成31年度に参加予定の国際会議参加費及び旅費として利用する。
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