研究課題/領域番号 |
18K05011
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松島 潤 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70282499)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 地震波減衰・散乱 / 亀裂特性解明 / 中東巨大油田 / 炭酸塩岩油層 / 岩石物理学モデル / 二酸化炭素EORモニタリング |
研究実績の概要 |
(A) 波動工学的な減衰・散乱解析技術の高度化と実データによる減衰・散乱現象の把握 :(A-1) 音波検層波形データにおいて、地震波インタフェロメトリとCMP技術により高分解能化と解析安定性を実現する手法を開発し、有力国際誌に論文が掲載された。(A-2) 音波検層波形データならびにVSP地震探査データにおいて、周波数領域上の特徴を利用することにより散乱減衰と内部減衰を分離する手法を開発し、有力国際誌に論文が掲載された。また、当該手法をアブダビ陸上油田で取得された実データに適用した結果が有力国際誌に論文が掲載された。(A-3) アブダビ陸上油田において取得されたVSP地震探査データを用いて、粘土層が卓越した層(炭化水素流体の流れを規制する性質を有する)の地震波減衰特性を世界で初めて明らかにして、有力国際誌に論文が掲載された。 (B) 室内実験による減衰・散乱現象の実証的測定:(B-1)コア試料において3次元X線CTを適用して得られる3次元デジタルコアに対して、弾性波動シミュレーションを行い、その波形から3次元歪み分布を得ることにより間接的に減衰の周波数依存性を評価する手法を開発した。数値シミュレーションにより手法の有効性を確認し、アブダビ陸上油田で取得された4種類のコア試料に対して適用して有効性を検証中である。 (C) 減衰・散乱現象を説明する岩石物理学モデルの構築とCO2-EORモニタリングの指針策定:(C-1) Biot理論に亀裂を考慮したSquirt flow現象を再現可能なBiot-squirt理論を考慮した複数の岩石物理モデルをプログラム化し、まずは適用性が容易なメタンハイドレート層や部分凍結した砂岩層に適用することにより最適なモデルを示し、有力国際誌に論文が2編掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度からの積み重ねがあったため、成果を順調に出すことができた。また、組織内の情報基盤センター所有の並列計算機を利用することにより、三次元弾性波シミュレーションが現実的な計算時間で実施できた。また、共同研究先(アラブ首長国連邦)とのコミュニケーションも十分行われており、解析に必要な十分な情報が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初室内実験システムを構築を目指していたが、擬似的な手法ではあるが数値シミュレーションを行うことにより減衰現象の周波数依存性を見いだすことができたので、この手法で展開を試みる。また、共同研究先(アラブ首長国連邦)からはアブダビにおける油田にて取得された60個のコア試料が送付されてきた。このような数を三次元X線CTイメージを得て上記提案手法で解析することは有益な情報が取得されることが期待されるが、コスト的には嵩むため工夫が必要となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
15,697円の誤差については、極めて少額であり、当初の使用計画に大きな変更があったためではない。上記15,697円については、少額であるため、消耗品費として使用する。
|