研究課題
(A) 波動工学的な減衰・散乱解析技術の高度化と実データによる減衰・散乱現象の把握 :(A-1) 三次元VSP地震探査データを用いることにより方位角に依存するP波弾性波減衰特性を抽出する手法を開発し、当該手法をアブダビ陸上油田で取得された実データに適用した。亀裂性炭酸塩岩貯留層の減衰異方性を抽出し物理的解釈を行った。その成果は論文として有力国際誌に掲載された。 (A-2) Walkaway VSP地震探査データを用いることによりS波弾性波減衰特性を抽出する手法を開発し、海域(国内メタンハイドレート賦存海域)で取得された実データに適用した。海底面でP波からS波に変換する波のS/N比を向上させることにより良好なS波弾性波減衰特性が得られ、有力国際誌に論文が掲載された。(B) 室内実験による減衰・散乱現象の実証的測定:(B-1)コア試料において3次元X線CTを適用して得られる3次元デジタルコアに対して、弾性波動シミュレーションを行い、その波形から3次元歪み分布を得ることにより間接的に減衰の広帯域周波数依存性を評価する手法(昨年度開発した手法)の高度化を行った(具体的にはひずみ分布計算の安定化)。数値シミュレーションにより手法の有効性を確認し、アブダビ陸上油田で取得された50種類のコア試料に対して適用して有効性を示した。その成果を学術講演会で発表を行い、現在論文執筆中である。(C) 減衰・散乱現象を説明する岩石物理学モデルの構築とCO2-EORモニタリングの指針策定:(C-1) Biot理論に亀裂を考慮したSquirt flow現象を再現可能なBiot-squirt理論を考慮した複数の岩石物理モデルをプログラム化し、まずは適用性が容易な部分凍結した砂岩層の室内実験データへ適用することによりその有効性を確認した。その成果は論文として有力国際誌に1編掲載された。
2: おおむね順調に進展している
今年度、共同研究先であるアブダビのカリファ大学より、岩石コアサンプルが50個ほど送付されてきた。当初10個程度を想定していたが、見込みより多い数となった。当該岩石コアサンプルにおいては、X線CT測定を実施する必要があり、研究予算の前倒しが必要となった。ただ、50個の大量のコアサンプルに提案手法を適用することができたため、コアサンプルを亀裂卓越性に富むサンプル、バグなどの存在に伴う不均質性の大きいサンプル、比較的に均質性を保持しいているサンプルに大別した上で、それぞれの傾向が分析できることになり、有益な結果を得ることができた。
アブダビ油田地帯で取得された各種地震探査データへの減衰・散乱解析とデジタルコアサンプルに基づいた室内実験により得られた結果を用いて統合化し、亀裂における弾性波減衰の広帯域周波数特性をその物理的モデルによる考察を含めて理論的構築を行う。この際、理論モデルとしてBiot理論に亀裂を考慮したSquirt flow現象を再現可能なBiot-squirt理論やinter-crack flow理論の適用と拡張を試みることによりモデルの適用性を確認する。最終的には油層シミュレータも併用し、CO2-EORモニタリング手法の指針を構築する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Journal of Applied Geophysics
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