研究実績の概要 |
未だ学術的に試行されたことのない,格子ボルツマン法による流体運動と周辺地盤・岩盤内に発生する地震動のシミュレーションを行う固液連成問題について,ソフトウェアの間初を継続した。流体通路壁面の垂直及び接戦応力の時間変化の推定が可能となったことから,現在成果発表のための論文を作成中である。微動であっても地震波であることからその発生場所を同定できること,その地震動の発生が液体流動を原因とすることが確認できていたが,さらに数値計算を継続した結果,振動の周波数が過去想定されていた極低周波とは限らないことを推察することができた。過去の論文調査により,地熱地帯で蒸気生産に伴う極低周波とは言えない10Hz弱の微動が観測された例があせたばかりであった。(Woith, et al., 2014)。これまで石油生産に伴う微動の例では,1から2Hzよりも低いという報告もみられている。粘性や流体速度といった点で,地熱生産井と石油生産井では異なる流体の運動が発生していることが推察され,振動計測により流体や流体運動そのものを推察できるとする仮説「地震波発生強度と地下を流動する流体流量や流速,粘性などの定量的な物理量や,透水係数や孔隙率など地下を構成する物質の状態を結びつける」を裏付ける結果になることも確認した。すなわち,振動の周波数を決定する要因は,振動の基となる物理現象にあることを確認した。この事実は,観測された波形が,地下を流れる流体の運動を支配するパラメーターを直接反映している可能性を強く示唆している。 参考文献:Woith, H., et al., 2014. Journal of Applied Geophysics, 106, 128-138.
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