研究課題/領域番号 |
18K05013
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
原 豊 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60242822)
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研究分担者 |
上代 良文 香川高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10321499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小形垂直軸風車 / 密集配置 / 風力発電 / 再生可能エネルギー / 数値流体力学 / 風洞実験 / 剛体運動予測モデル / 動的相互作用 |
研究実績の概要 |
米国の研究者らによって、高いアスペクト比(H/D)を持った小形垂直軸風車を密に配置することによって、単位面積当たりの発電出力が大形ウインドファーム以上に高くなる可能性が示されている。本研究では、一般的な低いアスペクト比(H/D = 0.868)のミニチュア・バタフライ風車を対象として、数値流体力学解析(CFD)と風洞実験によって、小形風車の密集配置の仕方による出力の違いと後流の挙動を調べ、最適な風車配置に関する知見を得ること、さらには小形風車の密集配置の有効性を明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、ロータ直径D = 50 mm、ロータ高さH = 43.4 mm、翼弦長20 mm、翼型NACA 0018、翼数3枚のミニチュア・バタフライ風車を3Dプリンターによって製作した。このミニチュア風車のトルク特性を風洞実験によって計測した。このミニチュア風車を2つ並べて、その間隔(gap)と主流方向に対する風車ペアの向きを任意に変更可能な装置を設計・試作した。 数値解析としては、本年度は風車ペアが主流と垂直な方向に離れた設置状態を対象として2次元CFDを実施した。この場合、2つの風車が同方向に回転するCO状態(Co-rotating)と、互いに反対方向に回転し、風車間の流れが風車の翼の移動方向と同じとなるCD状態(Counter-Down)および風車間の流れが翼の移動方向と逆向きとなるCU状態(Counter-Up)がある。この3つの状態において、gapが10、15、25、50、100、200 mmとなる6ケースについて解析を行った。CFD解析結果として、大局的に見て、CD > CO > CUの順で出力が向上することが分かった。また、もし2方向の風向が支配的であり、その風速が均等であると仮定した場合には、gap/D = 1.0 のCO状態が最良となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミニチュア風車の製作は、設計を鳥取大学が行い、3Dプリンターによる造形を香川高専が担当した。直径50mmの小さな風車モデルであるため、当初は苦労したが、何度かの試行の後、ほぼ同等の特性を持つ複数の風車モデルの製作に成功している。風車単体のトルク計測は鳥取大学が実施し、複数の風車を用いる風洞実験装置の設計・製作は香川高専が行った。当初計画にはなかったが、2つの風車の間隔(gap)を任意にかつ精度良く設定できる方法(スライド式)を香川高専が見出し、次年度以降に実施予定の風洞実験において、後流の影響を高い精度で計測する準備が整った。 CFD解析は、市販のソフトウェアであるSTAR-CCM+を使用し、最近組み込まれた2次元の剛体運動予測モデルを利用して、複数風車の動的相互作用の計算実行を可能とした。このモデルでは、流れ場の計算と同時に風車の運動方程式も解くため、風車モデルは、計算の時間進行に伴い回転数が変化する。単体の風車モデルの予備的CFD解析によって、トルク特性を予測し、その最大出力状態から風車モデルの回転数に対応した負荷トルクを決定した。また、計算格子には、オーバーセットメッシュ(重合格子)を採用し、2つの風車ロータの密接配置を計算可能とした。ただし、2次元計算であるにも関わらず、動的な相互作用の計算であるため、回転状態がある程度一定の状態に収束するまでに、かなりの計算時間を要することが判明した。そのため、申請時に計画していた初年度の2次元計算におけるマルチペア配置の計算までは実施できず、1ペア配置についても、基本的な3状態(CO, CD, CU)の計算を実施するに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
香川高専の風洞を用いた1ペアの風洞実験は、初年度に2次元CFDで計算した基本的な3状態(CO, CD, CU)の実験から実施する。その後に、2つの風車を主流と平行になるように並べたタンデム配置により、上流風車の後流に入った風車の回転状態(出力状態)のgap依存性を調べる。初年度に香川高専が開発したスライド式の風車設定装置を使用し、最大gapとして500mmまでのタンデム配置を計測する。なお、タンデム配置では2つの風車が同じ方向に回転する場合(TCO状態)と互いに逆方向に回転する場合(TIR状態)があるので、この2つのケースそれぞれについて実験を行う。以上の実験結果に基づいて、代表的なgapの値を決定し、その特定のgapを持った1ペアの風車を初年度に製作した回転ステージに搭載して、主流に対する風車の配置方向を細かく変え、1ペア風車特性の風向依存性を計測する。 CFD解析については、上記実験のタンデム配置と同様な2次元配置において、同方向回転(TCO)と逆方向回転(TIR)の2ケースで剛体運動予測モデルを用いた計算を行う。なお、これまでの経験から、初期状態を最終の収束状態に近づけて設定できれば、ある程度の時間短縮ができるため、収束状態が予想できる計算ケースについては、できるだけ初期回転数の設定を予測値に近くなるようにする。タンデム配置の解析が終了した後に、回転ステージを用いた風洞実験の結果を参照し、それと同等の条件で、1ペアの風向依存性のCFD解析を実施する。 第2年度は、風洞実験が先行する形となるが、風洞実験とCFD解析の結果を比較して、両者において同様の傾向が得られることを示すことが目標である。また、国内外での成果発表を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度において2,573円の経費が残額として残ったが、これは金額が小額であり必要な物品等が購入できないため、次年度に繰越すことにした。 平成31年度(令和元年度)においては、上記の繰越し分と研究代表者の研究費(1,000,000円)の合計額1,002,573円は、CFD解析を実行するためのソフトウェア(STAR-CCM+)のレンタル費および成果発表のため参加を予定する国際会議などへの出張旅費として使用する計画である。
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