研究課題/領域番号 |
18K05014
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
野口 拓郎 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (90600643)
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研究分担者 |
岡村 慶 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70324697)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海底下現場計測 / 間隙水 / 金属元素 / 濃縮 |
研究実績の概要 |
本研究は、海底後部資源の探査および開発時の環境影響調査等への利用を目的とした、海底下観測システムの開発を目的としている。 平成30年度は、先行研究により開発をした、現場間隙水採取装置(PileBunker)について、共同研究者である岡村慶教授とともに、送液部であるシリンジポンプの可動領域を設計変更・実装した。また、従来のプラスティック製の使い捨て注射器から強度が強いガラス製のガスタイトシリンジに変更することで、複数回のシリンジストロークを可能にした。 間隙水に含まれる任意の金属元素について、イオン交換樹脂やキレート樹脂等を用い、流路内(インライン)で濃縮するユニットを試作し、現場間隙水採取装置に実装し運用手法の検討を行った。 金属濃縮に用いる樹脂については、様々な市販のものについて卓上検討を行い、各樹脂のpHおよびマトリクス等の吸着・溶出特性に関する基礎実験を実施した。特にpH等の物理化学条件により成分と樹脂との吸着・溶出特性が大幅に変わるため、試料吸引口から濃縮ユニットの間にpH緩衝液を導入する機構の追加、もしくは、複数種の樹脂等を多段で組み合わせるなどの検討が必要であることがあきらかになった。 また、間隙水に含まれる放射性核種について、ガンマ線については高知大学海洋コア総合研究センターに設置されるガンマ線計測装置を用いて計測することとし、計測の前調整を実施した。アルファ線計測については、特に231Paに注目することとし、琉球大学理学部の棚原朗教授との研究打ち合わせを実施し、琉球大学研究基盤センターのアルファ線スペクトロメトリを使用することになった。アルファ線計測の前処理について確認し、電着方式によりステンレスディスクに固定したものを計測する方式に決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間には、(1)間隙水の現場抽出・濃縮手法開発と実装、(2)海底下物理化学環境の長期センシング、(3)化学物質の海底下多次元分布の具現化→物質拡散モデルへの適用に取り組むものであり、初年度の実施項目としては、以下の3点を予定していた。 ・PileBunkerに備え付ける送液部の変更(流路切り替えバルブ追加による多量サンプリング機能の追加) ・濃縮ユニットの開発(熱水中の放射性同位体ならびに希土類元素を濃縮・回収する樹脂等のパッケージングならびに間隙水採取流路への実装) ・放射性核種計測に向けた基礎検討 各実施項目について、研究実績の概要欄で上述した通り、予定項目の多くは実施を完了した。一方で、PileBunkerに備え付ける送液部の変更において、シリンジポンプによる多量送液に関しては、吸引・吐出流路のバルブ切り替えが必要となるため、装置全体の消費電力等の検討およびプログラム等の追加設計が必要になる可能性が出てきたため、初年度は改造のためのフィジビリティを実施することとし、2年目の運用試験の結果を踏まえて機器改造等にあたることとした。そのため、経費についても初年度で使用を予定した項目のうち、装置改造に関する項目を平成31年度に繰り越すことにしたものである。 全体の進行状況からすると、2年目・3年目の実証試験に向けて初年度に予定していた大半の基礎検討は終了しており、おおむね順調に進展していると判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で獲得した基礎検討結果をもとに、金属元素濃集ユニットについては、濃縮条件の検討および試料溶液の液性調整ユニットの開発や多段フィルタ等に関する検討を実施する。また、開発したユニットに関しては、現場間隙水採取装置に実装し、機器機構の運用実証試験を通したデータ獲得を実施する。特に初年度から2年度目に移行したシリンジポンプによる多量送液に関する改造については、運用実証試験での電力消費量等に関する情報を獲得ののち、早急に実施対応を図る。 当初、2年目に条件付き(可能であれば)で実施を予定していた深海域での調査については、乗船研究枠の獲得に至らなかったため、高知県浦ノ内湾等の沿岸域で実証試験を行うことにより、効率良く開発を推進することとする。また、深海調査に関する共同研究が進んでおり、今後の乗船機会の確保が可能になることもあるので、深海での使用を前提とした装置仕様での開発を行うものとする。 深海域での実海域試験の獲得に関して、共同利用船舶(例えば独立行政法人海洋研究開発機構等)の公募枠がかなり減少していることもあり、他の共同研究枠を通して大学等の研究船舶(東京大学大気海洋研究所や東京海洋大学、長崎大学)等の乗船研究枠の獲得にさらに努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初初年度に予定していた現場間隙水採取装置の改造のうち、シリンジポンプによる多量送液に関しては、吸引・吐出流路のバルブ切り替えが必要となることがあきらかになった。そのため、送液等の駆動およびデータログ等の電装部を含めた装置全体の消費電力およびプログラム等の追加設計が必要になる可能性が出てきたため、2年目の運用試験の結果を踏まえて機器改造等にあたることとし、経費についても平成31年度に繰り越すことにした。
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