海外高日射地域にて太陽光によりCO2フリー水素を高効率・低コストに発生して日本に輸送・消費する再生可能エネルギーシステム構築を目指して、太陽光水素生成に関する実稼働データを宮崎大学に設置する集光型太陽電池・水電解装置により取得することが本研究の要旨である。 実際の太陽光を用いた太陽光‐水素生成について実証試験を実施した。発電量が日射量の変動によって急峻に変動する集光型太陽電池に対応したDC/DCコンバータを開発することにより、1日積算の太陽光エネルギーから水素エネルギーへのエネルギー変換効率においてサブキロワットスケールのシステムでは世界最高の18.78%を達成した。 太陽光スペクトルを考慮した多接合型太陽電池の発電量予測モデルを構築した。多接合型太陽電池は、集光型太陽電池の発電素子として用いられる。太陽光スペクトルを考慮することで、多接合型太陽電池出力の計算値が実測値とよく一致した。新規集光型太陽電池パネルの長期屋外評価を実施することで、夏季では大気中の水分量が影響し、発電量が減少することを明らかにした。また、発電量予測モデルと太陽光-水素生成実証試験より得られたシステム動作特性をもとに、水素生成ポテンシャルを解析した。日本国内において、多接合型太陽電池を用いることで従来のシリコン太陽電池よりも水素生成量が多くなることを明らかにした。 太陽光・水素生成システムから得られる水素を用いたCO2のメタン化について新たに実施した。メタン化を行う反応管への水素・CO2混合ガスの供給量を最適化することで、メタン化に必要な消費電力を削減できた。 固体高分子型水電解装置の劣化の要因を明らかにするために、水電解装置に供給する水中の不純物の影響を調査し、水素製造に使用できる水質の特定を行った。固体高分子型水電解装置の劣化の要因が、Mg、Caが膜電極接合体に吸着することが要因であることを明らかにした。
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