研究課題/領域番号 |
18K05016
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
涌井 徹也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40339750)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 浮体式洋上風力発電 / 洋上風力発電 / 垂直軸型風力タービン / 連成解析 |
研究実績の概要 |
風力発電の普及促進を図るために垂直軸型タービンを用いた浮体式洋上風力発電システムの開発を目指して研究を行った.垂直軸型風力タービンは風向変動の影響を受けず,低重心でジャイロ効果を有することから,浮体式システムに用いた場合の利点が多い.しかし,ローター回転中にタービントルクや空力荷重などが大きく変動するため,風力タービン,浮体,制御器の動特性が複雑に干渉することが課題となっており,現状ではその導入可能性は明らかにされていない.そこで本研究では,垂直軸型浮体式洋上風力発電システムを対象とした空力-水力-弾性-制御連成解析モデルを構築し,数値解析を通してその連成挙動を解明する.さらに,風速や波高の不規則変動下での発電性能および疲労荷重特性を向上させる制御方策を確立することで,垂直軸型浮体式風力発電システムの導入可能性を高めるための基礎的かつ学術的な知見を得ることを目的としている. 2018年度は,まず,浮体の3次元的かつ動的な動揺に起因する垂直軸型タービンへの流入風速の変化を考慮した空力解析モデルを構築した.研究代表者がこれまでに構築した流管理論に基づく静的な回転軸傾斜下での空力解析モデルを改良し,流入速度に浮体(ローター回転軸)の傾斜速度を考慮できるようにした.さらに,研究代表者が開発してきた水平軸型浮体式風力発電システムの浮体モデルを垂直軸型タービンに適用できるように拡張し,離散制御器モデルを組み込むことで垂直軸型浮体式風力発電システムの空力-水力-弾性-制御連成解析モデルを構築した.構築したモデルを用いて,直線翼垂直軸型風力タービンを用いた浮体式風力発電システムの静水下での動的挙動解析を行った.その結果,ローター回転数の遅れ特性とそれに伴う空力特性の変化が浮体変位の動特性に与える影響は大きいものの,浮体変位からの空力特性とローター特性への影響は小さいことを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は垂直軸型風力タービンの空力解析モデルを浮体式洋上風力発電システムに適用できるように拡張を行い,さらに垂直軸型浮体式風力発電システムの空力-水力-弾性-制御連成解析モデルを構築することができた.浮体の3次元的かつ動的な動揺に起因する垂直軸型風力タービンへの流入風速の変化を考慮した空力解析モデルの開発は想定以上の工数を要したが,連成解析モデルの基本的な枠組み構築まで到達することができた.当初の研究計画では,2018年度は浮体式風力発電システムの空力-水力-弾性-制御連成解析モデルを構築することを目標としていたため,ほぼ計画通りの研究遂行が行えていると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は,まず,空力-水力-弾性-制御連成解析モデルの更なる改良を行う.連成解析モデルにおける浮体サブモデルでは,静水下での浮体に作用する外力として係留力,粘性抗力,および浮力を考慮している.そこで,波高変化に伴う波強制力やラディエーション力を浮体サブモデルで考慮する.さらに,浮体(ローター回転軸)動揺時に垂直軸型タービンに作用するジャイロモーメント特性が垂直軸型浮体式洋上風力発電システムにおける特徴的な特性であるため,浮体サブモデルでジャイロ効果のモデル化を行うことを次年度の到達目標とする.これにより,乱流変動風況ならびに不規則波高変化下での垂直軸型浮体式風力発電システムの動的挙動さらには制御課題の解明を行うための解析環境を整えることができる.
|