風力発電の普及促進を図るために垂直軸型タービンを用いた浮体式洋上風力発電システムの開発を目指して研究を行った.垂直軸型風力タービンは風向変動の影響を受けず,低重心でジャイロ効果を有することから,浮体式システムに用いた場合の利点が多い.しかし,ローター回転中にタービントルクや空力荷重などが大きく変動するため,風力タービン,浮体,制御器の動特性が複雑に干渉することが課題となっており,現状ではその導入可能性は明らかにされていない.そこで本研究では,垂直軸型浮体式洋上風力発電システムを対象とした空力-水力-弾性-制御連成解析モデルを構築し,数値解析を通してその連成挙動を解明する.さらに,風速や波高の不規則変動下での発電性能および疲労荷重特性を向上させる制御方策を確立することで,垂直軸型浮体式風力発電システムの導入可能性を高めるための基礎的かつ学術的な知見を得ることを目的としている. 2020年度は,浮体式垂直軸型風力発電システムにおいて,ローター回転中のタービントルクや空力荷重の変動を抑制するために,タービン翼の独立翼ピッチ操作方策を開発した.高風速域では流入風速やアジマス角に応じてタービン翼の迎え角が大きく変動するため,最適な翼ピッチ軌道を明らかにしておく必要がある.垂直軸型風力タービンの空力荷重は風速やアジマス角に対して強い非線形特性を有することから,翼ピッチ軌道の最適化計算と空力解析を組み合わせることで,ローター回転中の空力荷重の変動を最小化する翼ピッチ軌道を探索した.定格出力2000 kWシステムを対象に最適な翼ピッチ軌道を探索し,これに基づく独立翼ピッチ操作を導入した場合の空力荷重変動の抑制効果を昨年度構築した空力-水力-係留力連成シミュレーションモデルを用いて明らかにした.
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