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2019 年度 実施状況報告書

平面波局在混合基底電子状態計算の開発と疎水ナノ細孔中での高速プロトン移動の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K05035
研究機関横浜市立大学

研究代表者

石元 孝佳  横浜市立大学, 理学部, 准教授 (50543435)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードプロトン移動、 / 疎水ナノ細孔 / ハイブリッド法 / 電子状態計算
研究実績の概要

疎水ナノ細孔中ではバルク中よりも高速にプロトン伝導することが実験的に観測されているが、そのメカニズムや新規プロトン伝導材料設計につながる有力な知見はほとんどない。そこで、本申請では、疎水性ナノ細孔における高速プロトン移動機構の起源を明らかにするために、大規模系を計算可能な平面波基底と高精度計算に有利な局在基底の双方の特徴を併せ持つ平面波局在基底混合電子状態計算の開発および開発手法を用いて疎水性ナノ細孔における水の水素結合ネットワーク構造および高速プロトン移動機構の起源を解明する。
本年度は特に、平面波局在基底混合電子状態計算手法の開発に取り組んだ。これまでは、開発手法を用いたエネルギー計算のみが可能であったが、本年度の取り組みにより、解析的な構造最適化計算が可能になった。また、数値的な計算から求めたポテンシャルエネルギー面との比較を通して、開発した計算アルゴリズムが有効に機能していることも確認することが出来た。同時に、非ボルン-オッペンハイマー型量子化学計算(non-BO法)を実装したことで、水素・重水素の同位体効果の解析も可能となった。今年度の大きな成果としては、カーボンナノチューブ内の水が形成する水素結合ネットワークにおけるH/D置換による構造の違いやプロトン移動に伴う活性化エネルギーのH/D同位体効果を解析することが出来た。今後は引き続きプログラムの開発に取り組んでいくと共に、ナノ細孔内でのプロトン移動の解析にも着手していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで申請者が開発していた、平面波局在基底混合電子状態計算手法では、エネルギー計算のみが可能であったが、これまでの取り組みにより、解析的な構造最適化計算が可能になった。また、局在基底系での電子状態計算にnon-BO法を適用することにも成功した。本手法の有効性を検証する目的として、カーボンナノチューブを例にとり、水素結合ネットワークを介したプロトン移動反応における構造や活性化エネルギーにおけるH/D同位体効果を解析した。疎水ナノ細孔という複雑な環境下での水素の精密な計算が可能となった。
開発手法の実装と検証、という点では本年度予定していた項目をクリアすることが出来た。しかしながら、プロトン移動反応の解析に重要となる遷移状態探索プログラムの開発は当初の予定よりも収束性の問題があるため、やや遅れてはいるが、プログラムの大枠は完成しているため、いくつかのプロトタイプの解析を進めながら、さらなるプログラムの修正と改良に取り組む。これらの取り組みと並行して、今後は応用計算にも取り組んでいきたい。

今後の研究の推進方策

今後の研究については以下にあげる2項目について重点的に取り組む。
課題①局在平面波基底混合電子状態計算手法の開発
疎水性ナノ細孔部分に対する大規模計算と細孔内の水分子に対する高精度計算を実現するために、新たな局在平面波基底混合電子状態計算手法を開発する。すでに構造最適化のための解析プログラムや水素の量子効果の精密描写を実現した計算手法との融合には成功したが、今後はプロトン移動反応の活性化エネルギーを計算するアルゴリズムを実装する。遷移状態計算にはNudged elastic band (NEB)法を使用する。NEB法では通常の遷移状態計算で必要な二次微分の計算が不要のため、本申請での開発手法であるnon-BO法と組み合わせることで、プロトンの量子効果を露に考慮した形で遷移状態探索を行うことが可能となる。また、開発手法に関する論文をまとめる。
課題②疎水性ナノ細孔内でのプロトン移動機構の解析
課題①で開発した計算手法を用いて疎水性ナノ細孔内での水の水素結合ネットワーク構造を解析する。昨年度は疎水性ナノ細孔内に閉じ込められた水の安定構造に関するH/D同位体効果の解析に成功したので、今年度はプロトン移動における活性化エネルギーを開発手法を用いて解析する。すでに数値的な解は予備的に計算しているので、これらのデータとの比較を通して開発手法の有効性と疎水性ナノ細孔内部でのH/D挙動の本質的な理解のための解析に取り組む。

次年度使用額が生じた理由

今年度は年度末に参加予定だった国内、国際学会がキャンセルとなったため、次年度への使用額の繰り越しが生じた。成果発表のための国内、国際学会への参加や実験グループとの意見交換用の旅費などに活用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Hydrogen/deuterium adsorption and absorption properties on and in palladium using a combined plane wave and localized basis set method2020

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakagami, Masanori Tachikawa, Takayoshi Ishimoto
    • 雑誌名

      International Journal of Quantum Chemistry

      巻: 120 ページ: e26275

    • DOI

      https://doi.org/10.1002/qua.26275

    • 査読あり
  • [学会発表] 金属表面への分子吸着に対する H/D 同位体効果の理論解析に向けた CPLB 法の開発2020

    • 著者名/発表者名
      坂上 弘輝, 石元 孝佳, 立川 仁典
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会(2020年)
  • [学会発表] Theoretical study of H/D isotope effect with metal by using combined plane wave and localized basis set approach2020

    • 著者名/発表者名
      T. Ishimoto
    • 学会等名
      1st International Symposium "Hydrogenomics"
    • 国際学会
  • [学会発表] 材料特性の理解と設計に向けた分子シミュレーションの活用2020

    • 著者名/発表者名
      石元孝佳
    • 学会等名
      MBR講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of combined plane wave and localized basis sets method to treat the H/D isotope effect of adsorption of atoms/molecules on metal surfaces2019

    • 著者名/発表者名
      H. Sakagami, T. Ishimoto, and M. Tachikawa
    • 学会等名
      The 23rd International Annual Symposium on Computational Science and Engineering
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of combined plane wave and localized basis sets method toward the analysis of H/D adsorption mechanism on the metal surface2019

    • 著者名/発表者名
      H. Sakagami, T. Ishimoto, and M. Tachikawa
    • 学会等名
      Isotopes 2019 - The Cross-Disciplinary Conference on Stable Isotope Sciences
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of combined plane wave and localized basis sets method: Application of H/D adsorption on Pd(111) surface2019

    • 著者名/発表者名
      H. Sakagami, T. Ishimoto, and M. Tachikawa
    • 学会等名
      IAMS-YCU Autumn Workshop 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of combined plane wave and localized basis sets method toward the analysis of H/D isotope effect of CH4/CD4 adsorption on metal surface2019

    • 著者名/発表者名
      H. Sakagami, T. Ishimoto, O. Kobayashi, and M. Tachikawa
    • 学会等名
      第13回 分子科学討論会
    • 国際学会
  • [学会発表] CPLB法の開発とRh表面へのメタン吸着に関するH/D同位体効果の解析2019

    • 著者名/発表者名
      坂上 弘輝, 石元 孝佳, 立川 仁典
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2019秋季年会
  • [学会発表] 金属表面への吸着機構に関する H/D 同位体効果の理論解析2019

    • 著者名/発表者名
      坂上 弘輝, 石元 孝佳, 立川 仁典
    • 学会等名
      第13回 物性科学領域横断研究会
  • [学会発表] Theoretical study of electronic structure and catalytic activity in metal nanoparticles2019

    • 著者名/発表者名
      T. Ishimoto
    • 学会等名
      CatScience 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Theoretical study of hydrogen/deuterium absorption properties in Pd by using combined plane wave and localized basis set approach2019

    • 著者名/発表者名
      T. Ishimoto, H. Sakagami, and M. Tachikawa
    • 学会等名
      MRM2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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