研究課題/領域番号 |
18K05039
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
梅木 辰也 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00384735)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炭酸水素イオン / ギ酸イオン / NMR / 化学シフト / 自己拡散係数 / 縦緩和時間 / pH |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、水溶液中における炭酸水素ナトリウムとギ酸の酸塩基反応を調べた。炭酸水素ナトリウムとギ酸は化学反応し、CO2ガスが放出されることを確認した。CO2放出量の酸塩基混合比依存性を調べ、CO2放出量は炭酸水素ナトリウムと化学量論比1の関係にあることがわかった。このことは、CO2電気化学還元反応の初段階では、支持電解質として用いられた炭酸水素イオンがギ酸イオンに置換されることを示唆する。 次に、炭酸水素ナトリウムとギ酸ナトリウムの天然存在比試料を用いて、炭酸水素イオンとギ酸イオンの混合比が異なるナトリウム塩混合水溶液のpH測定を行った。ナトリウム塩混合系のpHはほぼ一定で、炭酸水素イオンの化学平衡はギ酸イオンで移動せず、ナトリウム塩混合水溶液中における炭酸化学種は主に炭酸水素イオンであることがわかった。 最後に、炭酸水素ナトリウムとギ酸ナトリウムの安定同位体試料を用いて、ナトリウム塩混合比の異なる重水溶液の各核種NMRスペクトルを測定した。ギ酸イオンの13C化学シフトは混合比に依存せず、ほぼ一定で、ギ酸イオンの水和構造は炭酸水素イオンの影響を受けないことを確認した。一方、炭酸水素イオンの13Cピークはギ酸イオン濃度増加にともない高磁場側にシフトした。また、ナトリウムイオンの23Naピークはギ酸イオン濃度増加にともない低磁場側にシフトした。炭酸水素イオンとナトリウムイオンの結果から、重水溶液中において炭酸水素イオンはナトリウムイオンと相互作用することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、炭酸水素ナトリウムとギ酸の酸塩基反応を調べ、CO2電気化学還元反応の初段階における炭酸水素イオンとギ酸イオンの置換を明らかとした。また、炭酸水素ナトリウムとギ酸ナトリウムについて、炭酸水素イオンとギ酸イオンの混合比が異なるナトリウム塩混合水溶液のpHと各核種NMRスペクトルを測定し、ギ酸イオンの水和構造は炭酸水素イオンの影響を受けないことを確認した。一方、炭酸水素イオンはナトリウムイオンと相互作用することが明らかとなった。これらのことから、CO2電気化学還元反応の初段階では、炭酸水素イオンはナトリウムイオンと相互作用しており、ギ酸(イオン)の生成にともなう炭酸水素イオンの分解によって、炭酸水素イオンとナトリウムイオンの相互作用は弱化し、ギ酸イオンとナトリウムイオンの水和構造が個々に形成されると考えられる。CO2電気化学還元反応の初段階における化学種変化を明らかにすることはできたが、それら水溶液中における水和構造やダイナミクスを検討するに至らず、「(3)やや遅れている。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、今後は、CO2電気化学還元反応のモデル溶液として、①炭酸水素ナトリウムとギ酸の混合系と②ギ酸ナトリウムとギ酸の混合系を扱う。①炭酸水素ナトリウムとギ酸の混合系について、反応速度定数を決定し、組成変化を定量的な視点で議論する。また、②ギ酸ナトリウムとギ酸の混合系について、pHや各核種NMRスペクトルを測定し、ギ酸イオンやナトリウムイオンの水和構造やダイナミクスを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の執行額は、初年度に薬品や器具を購入したため予算よりも少なかった。また、旅費の執行額は、学会参加が少なかったため予算よりも少なかった。一方、その他の執行額は、主に機器利用料であり、長時間のNMR測定が多かったため予算よりも僅かに多かった。結果的に、物品費や旅費が余剰となったため次年度使用額が生じた。次年度は、反応速度測定を計画しており、生じた次年度使用額は、CO2放出量を計測するためのマスフローメータの購入に充てる。
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