研究課題/領域番号 |
18K05041
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
北 幸海 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (40453047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 陽電子 / 陽電子親和力 / 振動励起 / 量子モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者がこれまでに開発してきた陽電子吸着分子に対する世界最高精度の第一原理法と、分光学的精度を有する振動状態理論をさらに発展・深化させることで、これまで起源が不明だった多原子分子への陽電子吸着状態の発現機構を明らかにすることを目的に研究を行なっている。H31(R01)年度は申請時の研究計画に基づき、前年度からの継続項目(1), および当該年度からの新規項目(2A)を実施した。 (1) 高精度理論計算に基づいた“計算”陽電子分子分光法の確立 高次の振動励起状態への陽電子吸着機構を詳細に議論するためには、(A)高次の振動励起準位に対して高精度な振動状態解析の実現、および(B) 陽電子分子分光スペクトルを非経験的に解析・帰属可能な新規解析手法が必要不可欠となる。そこで本研究では、H30年度に多体効果を効率よく取り込むことが可能なbackflow相関因子の開発・実装、および振動の確率密度分布を援用した陽電子吸着能に対する新規解析手法の開発を行なった。当該年度では幾つかの小分子の解析結果を理論手法開発にフィードバックし、励起状態解析の安定化・洗練化を目的としたアルゴリズムの改良を行なった。 (2A) 高次振動励起状態への陽電子吸着に関する網羅的解析 高次振動励起状態へ陽電子吸着機構を体系的に明らかにするために、実験結果が報告されている分子種に対して網羅的解析を実施した。具体的には、典型的な測定結果が報告されているアセトアルデヒド分子を対象に本理論手法の精度検証を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R02年度は申請時に記した研究計画通り、前年度からの継続課題(1A) Backflow相関因子による振動量子モンテカルロ法の高精度化、および(1B)振動励起状態における陽電子吸着能の精密計算法の開発を継続し、また(2) 高次振動励起状態への陽電子吸着に関する網羅的解析に着手した。年度末から深刻化したCOVID19の影響により、研究体制が当初案とは異なるものとなったため、一部の研究課題の着手に遅れが生じてしまっているが、最終年度内にリカバリーできる程度の遅れであるため、自己評価として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R02年度は申請時の研究計画の通り、H31年度からの継続課題である(2A) 高次陽電子吸着状態に関する網羅的解析を引き続き実施するとともに、(2B) 高次陽電子吸着状態の発現機構の体系化に着手する予定である。具体的には、赤外活性モードの基音・倍音準位およびこれらと強く相関する結合音準位を対象に、陽電子親和力に寄与し得る多極子モーメントや双極子分極率などの解析を実施する。そして、これらの振動励起状態における分子特性と陽電子親和力との相関関係の詳細を明らかにすることで、多原子分子への高次陽電子吸着機構の体系化を図る予定である。
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