研究実績の概要 |
本研究では、申請者がこれまでに開発してきた陽電子吸着分子に対する世界最高精度の第一原理法と、分光学的精度を有する振動状態理論をさらに発展・深化させることで、これまで起源が不明だった多原子分子への陽電子吸着状態の発現機構を明らかにすることを目的に研究を行なっている。R02年度は申請時の研究計画に基づき、前年度からの継続項目 (2A)および(2B)を実施した。 (2A) 高次振動励起状態への陽電子吸着の解析 高次の振動励起状態への陽電子吸着機構を体系的に明らかにするために、実験結果が報告されている分子に対して網羅的解析を実施した。具体的には典型的な測定結果が報告されているアセトアルデヒド分子を対象に本理論手法の精度検証を実施した。また、この段階で得られる結果を(1A,1B)へフィードバックすることで、信頼性と精度を損なうことなく理論手法の洗錬化させた。本解析から得られる振動励起状態に対する陽電子親和力および遷移双極子モーメントから、実験結果と直接対応する共鳴スペクトルを算出し、従来の模型理論では解析できなかった陽電子吸着状態の帰属を行なった。 (2B) 高次振動励起状態への陽電子吸着機構の体系化 (2A)で得た系統的な解析結果を元に、高次の振動励起状態への陽電子吸着機構を体系的に理解するために、赤外活性モードの基音・倍音準位、そしてこれらと強く結合する結合音準位を対象に、陽電子親和力に寄与し得る多極子モーメントや双極子分極率などの解析を実施した。
|