近年、有機材料を用いた電子材料(例えば有機薄膜トランジスタや太陽電池)が注目を集めている。これは、有機材料特有のしなやかさ、スプレー塗布可能性などの液状化によるコストの抑制など無機半導体材料では成し得ない特性を有しているためである。有機半導体材料では光を照射することにより励起子が生成する。励起子の緩和ダイナミクスとして、数fs~psの時間スケールで電子・正孔対の電荷再結合または電荷分離が起こる。この電荷分離過程の分岐比が光電変換の効率を主に支配する。また電子遷移の余剰エネルギーが核の振動に散逸されると、光電変換効率は低下する。このような有機半導体における光励起初期過程の詳細を明らかにするためには、フェムト秒レーザーを用いた超高速分光が必要となる。 本研究では超短パルスレーザーを用いて有機半導体デバイスの過渡光電流検出システムを構築する。それを用いて、有機半導体デバイスに電圧印加を行い、デバイスの動作時における励起子ダイナミクスの詳細を調べる。さらに分子振動モード毎の光電流変換効率の測定手法を確立し、新規材料開発のための指針を示す。具体的な研究内容は、① 超短パルスレーザーによる有機半導体デバイスの過渡光電流検出② 過渡吸収スペクトルと過渡光電流の相関測定 ③ 分子振動モード毎の電流密度―電圧特性測定の3点である。 本年度は、有機半導体デバイスの作成に関して、学内の共同利用施設にて試作品の制作手順等の研究打ち合わせを行った。また光電流検出系の構築を行った。
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