研究課題/領域番号 |
18K05048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺本 高啓 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任講師(常勤) (40467056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超高速分光 |
研究実績の概要 |
近年、有機材料を用いた電子材料(例えば有機薄膜トランジスタや太陽電池)が注目を集めている。これは、有機材料特有のしなやかさ、スプレー塗布可能性などの液状化によるコストの抑制など無機半導体材料では成し得ない特性を有しているためである。有機半導体材料では光を照射することにより励起子が生成する。励起子の緩和ダイナミクスとして、数fs~psの時間スケールで電子・正孔対の電荷再結合または電荷分離が起こる。この電荷分離過程の分岐比が光電変換の効率を主に支配する。また電子遷移の余剰エネルギーが核の振動に散逸されると、光電変換効率は低下する。このような有機半導体における光励起初期過程の詳細を明らかにするためには、フェムト秒レーザーを用いた超高速分光が必要となる。 本研究では超短パルスレーザーを用いて有機半導体デバイスの過渡光電流検出システムを構築する。それを用いて、有機半導体デバイスに電圧印加を行い、デバイスの動作時における励起子ダイナミクスの詳細を調べる。さらに分子振動モード毎の光電流変換効率の測定手法を確立し、新規材料開発のための指針を示す。具体的な研究内容は、① 超短パルスレーザーによる有機半導体デバイスの過渡光電流検出② 過渡吸収スペクトルと過渡光電流の相関測定 ③ 分子振動モード毎の電流密度―電圧特性測定の3点である。 本年度は異動に伴う研究環境整備を行った。その後、超短パルスレーザーシステムの再構築を行い、過渡光電流分光実験システムの構築も行った。さらに研究対象となる有機薄膜太陽電池について、企業と複数の試料を共同で制作し、光電変換効率の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は移設を伴ったため、新たに研究環境整備から進めた。実験環境の整備が完了した後、速やかに超短パルスレーザーシステムの再構築を行うことができた。また過渡光電流分光を行うのに必要な検出系の購入および構築も行った。 さらに対象となる有機薄膜太陽電池について、企業と連携し、複数の試料の制作を完了した。そしてそれらの光電変換効率の測定を行った。 次年度はこれらを用いて過渡光電流分光計測を行っていく段階であるので、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
超短パルスレーザーを用いた実験環境の構築は完了しているので、本年度用意した複数の有機薄膜太陽電池を用いて過渡光電流分光を行う。また今後は最近注目されているペロブスカイト太陽電池を用いた過渡光電流分光を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は異動に伴う実験室の移動などがあった。そのため当初予定と異なる支出となった。
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