研究課題
近年、有機材料を用いた電子材料(例えば有機薄膜トランジスタや太陽電池)が注目を集めている。これは、有機材料特有のしなやかさ、スプレー塗布可能性などの液状化によるコストの抑制など無機半導体材料では成し得ない特性を有しているためである。有機半導体材料では光を照射することにより励起子が生成する。励起子の緩和ダイナミクスとして、数fs~psの時間スケールで電子・正孔対の電荷再結合または電荷分離が起こる。この電荷分離過程の分岐比が光電変換の効率を主に支配する。また電子遷移の余剰エネルギーが核の振動に散逸されると、光電変換効率は低下する。このような有機半導体における光励起初期過程の詳細を明らかにするためには、フェムト秒レーザーを用いた超高速分光が必要となる。本研究では超短パルスレーザーを用いて有機半導体デバイスの過渡光電流検出システムを構築する。それを用いて、有機半導体デバイスに電圧印加を行い、デバイスの動作時における励起子ダイナミクスの詳細を調べることを目的として研究を進めている。前年度までに有機薄膜、ペロブスカイト太陽電池デバイスの制作を行い、光電変換効率の測定を行っている。また材料となるドナーアクセプター分子対の量子化学計算を行い、電子移動に関与する分子振動モードを調べている。さらに2重変調法を導入した過渡光電流分光実験システムの構築を行なっている。本年度は前年度の成果を国内会議で報告した。2重変調システムの変調周波数を上げるため、独自の同期分周回路を試みた。すなわちレーザーの繰り返し周波数1kHzを入力として、200Hz、500Hz、700Hzという3つの同期した周波数を出力する分周回路を制作した。ポンプ光を500Hz、プローブ光を200Hzでそれぞれチョッパーで間引き、和周波に対応する700Hzをロックイン検波し、従来よりも超高速応答を示す信号の検出に成功した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
The Journal of Physical Chemistry B
巻: 125 ページ: 10832~10842
10.1021/acs.jpcb.1c07501
Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
巻: 54 ページ: 105003~105003
10.1088/1361-6455/abf7ce
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 498~498
10.1038/s41598-020-80105-7
Journal of Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves
巻: 42 ページ: 647~655
10.1007/s10762-021-00797-4