研究課題
本研究では、フェレドキシン:NADP+還元酵素(FNR)溶液のフェムト秒領域での超高速時間分解蛍光計測法を用いた光誘起電子移動過程の観測、および分子動力学法を用いたFNRの蛋白構造の予測により、液相中におけるFNRの蛋白構造、および構造異性体の有無などについて理論的、実験的に検証するとともに、異なる種のFNRについても同様に検討を行い、フェレドキシンとの相互作用に伴うFNRの蛋白構造変化などについて検証する。最終年度は、トウモロコシ葉由来FNRのアイソザイムのフェムト秒蛍光計測を試みた。しかしながらレーザー照射による試料の劣化が速く、明確な蛍光減衰データの取得に到らなかった。次に、FNRとFdが錯体化した状態におけるフェムト秒蛍光計測を行った。ほうれん草由来FNRの溶液にフェレドキシン(Fd)を過剰に添加し、分光計測およびフェムト秒計測を行った。分光計測では、錯体化したFNRの吸収帯が観測されたが、定常蛍光スペクトルでは、FNR単体の蛍光帯と同様の波長域に蛍光がわずかに観測された。フェムト秒蛍光計測を行いFNR単体での計測結果と蛍光寿命を比較すると寿命に大きな差は見られず、蛍光はおそらく錯体を形成せず残留したFNRからのものであると考えられる。FNRの立体構造を用いFNRの光誘起電子移動速度を計算し、理論的に得られる電子移動速度と実験値がほぼ一致することがわかった。MDおよびMO計算により溶液中でのFNRとFdの錯体構造について検討し、溶液中において錯体ではFNR内でのイソアロキサジンのタンパク質内の配置が異なっている可能性があることがわかった。関連研究として、フラビン酵素の一種であるD-アミノ酸酸化酵素(DAAO)の錯体構造についてMD、MO計算による検証を行うとともに、フラビン酵素内で起こる光誘起電子移動速度のエネルギーギャップ則に基づく理論予測を行った。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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