研究課題
本研究の目的は、未解明であるプラズモンによる近接場キラリティ発現の起源を明らかにし、近接場円偏光を分子との光不斉反応場へ展開することである。そのために、プラズモンナノ構造の形状と近接場の分光特性およびそのイメージング・さらには緩和過程との相関を定量的に明らかにし、物質との相互作用が可能な系の構築を目指し、研究を行った。2018・2019年度は金属ナノ構造を電子線リソグラフィを用いて精密に作製し、多光子光電子顕微鏡を用い、円偏光照射下での近接場分布および左右円偏光照射下での差スペクトルの測定を行った。また、フェムト秒レーザー・偏光素子・および解析ソフトウェアを改修・更新し、円偏光照射下での近接場マッピング及びスペクトル計測の信頼性を大幅に向上させた。その結果、アキラルなプラズモン金ナノ長方形構造であっても円偏光照射下での近接場はキラリティを有する非対称な形状となることが分かった。さらに、キラルな近接場の起源が金ナノ構造の二つのプラズモンモード間の干渉であるという新規な解釈を示した。2020年度は、モード間干渉の概念を用いて、各プラズモンモードの位相と強度の波長依存性を定式化することで円偏光照射下での近接場の非対称性を表す左右円偏光の差スペクトルを定量的に予測することに成功した(論文投稿中)。さらに、左右円偏光照射下で励起されるプラズモンモードが異なる金属ナノ構造の近接場スペクトルとその緩和時間の計測に成功した(論文投稿済み・査読中)。本研究を通して観測された円偏光照射下での近接場特性は、近接場の電場増強によって金属ナノ構造から放出された光電子を検出した結果によるものであることから、遠方場円偏光から近接場、そして物質(光電子)への変換を観測することに成功した。今後、円偏光照射下での近接場や光電子を分子反応に作用させることで、従来では達成し得ない不斉反応への展開が期待される。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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