研究課題/領域番号 |
18K05054
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野澤 純 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60569317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コロイド結晶 / BCF理論 / ステップ自由エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究では,コロイド粒子間の相互作用と不純物粒子の結晶への取り込み挙動の関係を定量的に明らかにする事で,不純物分配の本質的なメカニズムを明らかにすることを目的としている. 本年度は最初に不純物を含まない系での結晶成長メカニズムを明らかにする実験を行った.これまでに,成長ダイナミクスに着目してステップ成長速度と過飽和度の関係を明らかにしている.本年度は,成長ダイナミクスに密接に関わっているキンク形成について,過飽和度対するキンク密度を測定した.その結果,過飽和度が増加するに従って大きなキンク密度を持つ事が明らかとなった.また,BCF理論(Burton Cabrera Frank theory)に基づいて平衡に近い環境でのキンク距離から粒子間相互作用を見積もった.その結果,各高分子濃度のステップ自由エネルギー,さらに結合エネルギーを求める事に成功した.得られた値は過去に核形成頻度から見積もったものと整合的であった.通常の結晶成長理論を適用して,コロイド結晶において初めて粒子間相互作用を見積もることに成功した. 不純物を添加した系においては,不純物濃度を徐々に増加させていくと2元系の規則構造の形成を確認した.当初予定としていない研究対象であるが,多様な構造を有するコロイド結晶は応用面で広く必要とされているため,形成条件と成長メカニズムを明らかにしていく予定である.同じく当初の予定には無かったが,外場を印加した結晶成長の制御法を検討している.溶液の流れや電場などによって結晶成長がどのように変化するのか,結晶の大面積化や高品質化といった応用を念頭においた研究にも着手している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キンク間距離と過飽和度の関係において,コロイド結晶において貴重な知見が得られ,論文として発表できた.また,当初の計画になかった結晶成長制御や2元系結晶成長において大きな進展が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究費を用いて300から800ナノメートルの間の粒径のコロイド粒子をいくつか購入する.添加粒子の粒径,結晶粒子の粒径,高分子濃度のパラメータを変化させ,不純物粒子の取り込み挙動,2元系規則構造の晶出条件,または晶出プロセスがどのように変化するのか明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿の際の英文校閲費としておよそ5万円確保していたが,年度中に書き終わることが出来なかったためそのまま繰り越した.
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