コロイド粒子が結晶のように規則配列したコロイド結晶は,センサー,触媒,光学デバイスなど多岐にわたる応用が期待されている.多様な構造を有する2元系コロイド結晶はそれぞれの応用に必要とされる構造に対応できるため,高品質で大型の結晶を目指した研究が盛んに行われている.しかしながら,その構造の複雑さから結晶成長,または目的の構造を成長させる構造制御は容易ではない.昨年度,2元系コロイド結晶成長の重要な特徴をその場観察によって明らかにした.初めに晶出したコロイド結晶のステップエッジに2元系コロイド結晶が特定の方位関係で核形成,その後成長する事を見出した.我々はこれを1次元ヘテロエピタキシャル成長と呼んでいる.この観察事実から,通常の結晶面上でのヘテロエピタキシャル成長がコロイド結晶成長においても可能であると着想し,実際,溶液条件や粒径を適切に選択する事により,基板結晶として作成した単一粒子によるコロイド結晶表面に2元系コロイド結晶を成長させることに成功した.基板結晶,2元系を構成する大粒径粒子と小粒径粒子の各粒径,粒子間の相互作用を変化させる高分子濃度や塩濃度を調節する事によって多様な2元系コロイド結晶を育成する事に成功した.従来,基板を利用したコロイド結晶育成法は,単一粒子を用い,基板と育成結晶の構造や周期が類似のホモエピタキシャル成長に限られていた.本手法は,異種結晶基板を用いた(ヘテロエピタキシャル成長)新しい2元系コロイド結晶育成法である.2元系コロイド結晶のような複雑な構造を育成する新しい手法を見出す事に成功した.
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