研究課題/領域番号 |
18K05056
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
飯村 兼一 宇都宮大学, 工学部, 教授 (10272220)
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研究分担者 |
加藤 紀弘 宇都宮大学, 工学部, 教授 (00261818)
奈須野 恵理 宇都宮大学, 工学部, 助教 (80709329)
佐藤 高彰 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20373029)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / 生体高分子 / 界面活性剤 / 相間移動 / 界面制御 / X線小角散乱法 |
研究実績の概要 |
生体由来の高分子であるアルギン酸ナトリウム、キトサン、およびコンカナバリンA、ピーナッツレクチン、レンズマメレクチン、小麦胚芽レクチンなどのレクチンを被覆材として合成した金ナノ粒子に関しては、作製条件に依存した構造的および光学的特徴や分散安定性などについて調べたとともに、細菌への吸着性について評価した。表面被覆材が異なる金ナノ粒子とグラム陰性細菌および陽性細菌の複数の組み合わせに対して、菌体-金ナノ粒子混合溶液における菌体およびその凝集体のサイズ分布をレーザー回折/散乱法により評価し、金ナノ粒子の表面官能基や添加量、菌体との組み合わせに依存して菌体の凝集性が異なることを明らかにした。特にコンカナバリンA.被覆金ナノ粒子と強い相互作用を示したグラム陰性細菌に対しては、金ナノ粒子添加量に依存した凝集および浮遊菌体の存在比の変化を定量的にまとめた。また、糖鎖化合物であるアミロペクチンの水溶液とコンカナバリンA被覆金ナノ粒子の分散液との混合溶液における凝集実験から、コンカナバリンAを金表面に固定化しても糖鎖認識・結合能が保持されていることを確認した。また、異なる符号の表面電荷をもつ金ナノ粒子の生死細胞分散液に対する添加実験から、バイオフィルムの主成分である細胞外多糖と金ナノ粒子の表面電荷による相互作用の違いを明らかにした。一方 、界面活性剤被覆金ナノ粒子による相間移動については、分子構造が異なる一連の界面活性剤を用いて合成した金ナノ粒子に対して、合成条件に依存した粒子構造や安定性などの評価と相間移動メカニズムの解明のための検討を推進したとともに、実験手法の改良によって相関移動時間の短縮化がなされた。またX線小角散乱により、粒径の均一性を向上させた試料を用いて系統的に測定・解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金ナノ粒子の表面官能基や菌体との組み合わせに依存した菌体凝集性の違いなどから、金ナノ粒子と菌体の表面官能基間の相互作用に関する知見を蓄積している。また、コンカナバリンA被覆金ナノ粒子については、グラム陰性細菌分散液に対する添加量に依存した菌体凝集性を定量的に評価したとともに、糖鎖化合物としてアミロペクチンを用いたモデル系での実験からレクチン-糖鎖間の相互作用を確認し定量的解釈を進めている。さらに、バイオフィルムの主成分である細胞外多糖と金ナノ粒子の相互作用を示す結果を得たことから、金ナノ粒子を用いた細胞外多糖の補足能に関する知見を得ている。 界面活性剤を表面被覆材として用いて合成した金ナノ粒子に対しては、分子構造が系統的に異なる界面活性剤に対して、作製条件に依存した金ナノ粒子の構造や物性、安定性のキャラクタリゼーションと相間移動現象の効率化およびメカニズム解明に向けた検討が進行している。 小角X線散乱法によるナノ粒子構造解析では、本研究で合成された種々の金ナノ粒子に対する金のコアのサイズや表面被覆材層の厚さなどの構造的特徴の解析が系統的に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
生体高分子被覆金ナノ粒子については、被覆材に依存した合成条件の最適化と構造・物性制御法の確立、ならびに菌体表面や細胞外多糖などの生体試料との相互作用に関する研究を継続して進めてゆく。生体試料との相互作用解析では、実際の生体試料に加え、モデル化合物を用いた検討も積極的に進める。また、水溶液中に分散した状態の金ナノ粒子に加え、ヒドロゲルに金ナノ粒子を分散・固定化した試料も用い、生体試料と表面被覆材の相互作用を評価する。一方、界面活性剤被覆金ナノ粒子では、相関移動メカニズムモデルの提案を目指すとともに、より効率的に相間移動を達成させるための方法、ならびに有機溶媒分散型金ナノ粒子を用いたオルガノゲルへの固定化法と温度変化などの外部刺激に対する光学特性応答などの評価実験を推進する。いずれの粒子に対しても、小角X線散乱法等により粒子構造のキャラクタリゼーションを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、消耗品費の残額による。次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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