研究課題/領域番号 |
18K05061
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
成田 貴行 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (30423560)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温度ヒステリシス / 光駆動型拍動 |
研究実績の概要 |
白色光を用いたゲルの光駆動型自律拍動を目的に検討を行った。環境温度がゲルの拍動に及ぼす影響を調べ、白色光下でのゲルの自律拍動条件を検討した。処理後のゲルは浸漬前と比較して約1.4倍(面積比)に大きくなった。また、このゲルに白色光を照射したところ、すべての環境温度において速やかな温度上昇と収縮転移温度への到達がみられ、それに伴うゲルの収縮が確認された。ゲルの収縮とともにゲル温度は降下し、ゲルの再膨潤が確認された。これらの条件ではその後、小さな温度の再上昇が確認されたが、再収縮が確認されなかった。この結果は数値シミュレーションによって得られたものとほぼ一致しており、環境温度がゲルの拍動に対して与えた影響だと考えられる。
大気化中で拍動する材料の創製の為に、溶媒の違いおよび染み込ませた布地が色変化の温度ヒステリシスに与える影響の検討と受光発熱時の変温挙動の検討を行った。この系では溶媒の融点および結晶化温度が色変化に強く影響を与えることから、色変化と溶媒の相変化の関係を考察した。また白色光を照射した際における温度上昇挙動を、温度ヒステリシス特性から検討した。 どの試料においても発色開始温度は結晶化温度とほぼ同じであった。このことは、発色過程は色素の結晶化が主過程であることを示唆している。一方、消色は溶媒の融点より低い温度で開始し、融点より高い温度で完全消色している。DSC測定の結果、融点より低い温度で液晶状態が存在することを示された。従って、融点より低い温度であっても消色し始めたのは、溶媒が液晶状態で顕色剤と相互作用することに起因していると推察できる。サーモクロミック色材の温度ヒステリシス特性を変えることで、受光時に色材が塗付された表面温度を調温できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲル自身が拍動して自励ポンプとして働かせるゲルからのアプローチと、定常光下で振動しる色素の開発の二つの面からアプローチしている。前者は昨年太陽下でのレスポンスには成功し、今年度、数回の振動を観察することに成功した。しかし、半永久的な自励振動を確立できていない。一方、後者の調製した感温性色素は、色度の振動が確認することに成功しが不安定であった。以前、振幅が小さいことから実用性は乏しい状況にある。いくつかの解決方法が挙げられるのでこれについて今後検討をして行く。
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今後の研究の推進方策 |
今回の条件設定では白色光下での拍動に成功した。しかし、半永久的な拍動には達していない。その原因は今だ分かっていないが、ゲル内に温度密度差が生まれていることを原因に挙げている。そこで、サーモグラフィを用いてゲルの変形挙動と温度分布の相間を確認し、拍動が連続して生じない理由を明らかにするとともに、ゲル個体の違いにより生じる拍動の違いを明らかにする。そしてゲルの太陽光下での拍動の最適目指す。 定常光下で振動する色素の開発では、非常に狭い温度変化であるが色の自律変化を観察している。上記に示したようにまだ、この自律的温度振動の振幅及び振動数のコントロールについてはなし得ていない。特に光源からの距離の調整が不十分であるため、再現性のある色振動挙動を目指し研究を行う。一方で、条件によってはサーモクロミック材料の自律的なスイングも観察されており、この原理は未だはっきりしていない。この解明は定常光を当てるだけで自律的にスイングする材料を作るヒントとしては欠かせないため、この件院究明の為、材料の形状、光の当たり方、光強度、当のパラメーターを変えて何がコントロール因子なのかをはっきりさせる試みを行ってゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が残ったため残額については2020年度の光学機器を安定化させるための部品(消耗品)の購入に充てる。
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