研究課題
本研究課題は申請者が2016年度に第一著者として初めて報告した新しい実験法「蓄積電荷測定法」を発展させることを目的としている。この実験手法は印加電圧変化に伴う蓄積電荷量変化を、電圧振動法という申請者が提案した手法により精密測定するものであり、得られた結果を解析することにより、電荷注入障壁をはじめとする電極/有機半導体界面の詳細情報を得ることができる。蓄積電荷測定法の特徴の一つは、電流-電圧特性といった動的なものではなく、蓄積電荷量変化という準静的なパラメータが得られることにあり、これにより理論的な解析が容易になる。これまでの研究では、半定量的解析と実験データに基づく成果を報告してきたが、最終年度(1年間延長)に当たる2021年においては、これまで行えなかったPoisson-Boltzmann方程式を用いた理論計算による実験データの解析を行った。その結果、蓄積電荷測定で得られるデータは、熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合と、非熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合の2通りがあることを初めて明らかにした。蓄積電荷測定法により電荷注入障壁を求めるためには、非熱平衡型の電荷抽出が観測されるほうが都合が良いこと、不完全な電荷抽出が起こる場合があることも合わせて報告した。非熱平衡型になるか熱平衡型になるかは、用いる有機半導体の移動度、注入障壁の大きさに依存すると思われる。これらの成果は2021年度のJ.Appl.Phys.誌に掲載された。また上記の研究と合わせて、whispering gallery mode共鳴を用いた発光実験を行い、論文発表した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
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