らせん性多糖であるカードランの側鎖に抗生物質を導入した半人工多糖の合成法を元に、様々なバンコマイシン導入率を持つ抗生物質導入カードランを合成し、これらを用いた薄膜を調製することで、その抗菌活性と、活性発現の原理について評価した。その結果、膜上の抗菌剤の密度が同様の条件であっても、カードラン上の導入率の変化に依存して、抗菌活性が変化することが明らかとなった。このことから、抗生物質をカードラン上に導入することで得られる、多価効果の発現が示唆された。以上の知見をもとに、ウイルスなどの高感度検出を目指した多糖型シグナル増幅システムについて、シグナル増強ユニットと標的検出ユニットとを導入したカードランの合成法を確立するに至った。 酵母由来のβグルカンによる油溶性化粧品材料の水溶化について、より実用化に繋がる成果を得るために工業的生産性に優れるボールミル法を用いた固相複合化の最適を試みた。紫外線吸収剤との複合化については、直ちに実用化に繋がるほどの成果には及ばなかったものの、化粧品材料としての活用につながる知見を得た。さらに、同様の方法は抗酸化剤との複合化にも有効であることが明らかとなり、酵母由来多糖材料の化粧品材料としての可能性を示すことができた。さらに、これらの多糖の腎不全用剤として有効性も明確に示すことができた。以上のデータは、大麦やビール酵母などの起源が異なる多糖類について同様に得た実験結果と比較することで、本研究で用いている酵母由来βグルカンが他にはない、優位な特性を持つことを明らかにすることができた。興味深いことに、水溶性の酵母由来βグルカンがカーボンナノチューブを単分子的に包接し、水溶化することを見出した。特に、この包接過程において、特定のキラリティーを持つカーボンナノチューブに対して選択性を示すことが明らかとなった。
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