研究課題/領域番号 |
18K05071
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
片桐 洋史 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (40447206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アズレン / π共役系 / 分子軌道制御 / ビアズレン / オリゴアズレン / 有機半導体材料 / 対称性 / 有機結晶 |
研究実績の概要 |
今年度は,まず,前年度に開発したアルキル化テルアズレン誘導体のOFET特性向上を目指して,薄膜作成条件の最適化を行った.その結果,高温成膜時において高い分子配向性が得られることが明らかになった.そこで,さらなる化合物の溶解性の向上を目的として,分岐型アルキル基を持つ拡張型オリゴアズレンを合成した.その結果,従来の直鎖アルキル基をもつ化合物と比較して約10倍の溶解性を得ることに成功した.本結果は,分岐アルキル基をもつビルディングブロックが高溶解性オリゴアズレン類の構築に有効であることを示唆している.室温成膜した薄膜のX線構造解析を行ったところ,電荷輸送に有利なアンチパラレル型の分子配向が確認された.本結果は,分岐アルキル基の導入によって分子配向が大きく阻害されないことを示しており,一般的な共役系骨格とは異なるアズレン独自の特長と考えることができる.また,脱炭酸反応の際に高沸点溶媒を用いることで目的物の収率が著しく向上することを見出した.本手法はこれまでのアズレン合成法に新しい指針を与えるものである.次に,前年度までに開発したアルキル基をもつアズレン誘導体を用いてエンドキャップ型オリゴアズレン類の合成を検討した.その結果,鈴木カップリング反応によって簡便に目的化合物を合成することができた.得られた全てのオリゴマーは電荷輸送に有利なヘリンボーン構造を示した.本検討によってアズレンを基盤とする新規n型半導体材料の探索指針を確立することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,分岐アルキル基をもつビルディングブロックを開発することで拡張型オリゴアズレンに高い溶解性と分子配向性を付与することに成功した.また,エンドキャッピング法の一般性を確立し,電荷輸送に有利なヘリンボーン構造を形成することを明らかにした.以上の結果から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまでに,高い溶解性と結晶性を併せ持つオリゴアズレン類縁体を合成した.しかしながら.デバイス基板上で均一な薄膜を得ることが困難であり,良好なFET特性を得る上で大きな課題となっている.次年度は,基板の表面修飾ならびに高分子ブレンド法によって,高分子と低分子との二層構造を鍵とする均一な薄膜の作成条件を検討する.
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